巨人“大失速”の起点 阪神・矢野監督は原采配を教訓にした?【柴田勲のセブンアイズ】

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四球が多い投手陣

 それにしても巨人投手陣は四球が多い(※)。26日は山口俊、戸根千明、鍵谷陽平の3投手で8四球だ。阪神の一つは戦略的な申告敬遠だった。この試合、巨人の安打数は7で阪神は4だったが、阪神、実質的には12安打に比しい。

 四球をきっかけとした得点は儲けものだ。5回の巨人の3失点は四球が絡んだ。先発の山口は1回からフラフラしていて嫌な予感が漂っていた。3回、糸原健斗に四球を与えたところでベンチも諦めざるを得なかった。戸根、鍵谷にも伝染した。

 四球一個で試合展開が大きく変わることがよくある。1971年、阪急との日本シリーズ、1勝1敗のタイで第3戦(後楽園)を迎えた。このシリーズは阪急絶対有利の下馬評だった。

 実際、この試合はエース山田久志に抑え込まれ1点ビハインドで9回を迎えた。私は1死から四球で出塁した。山田が初めて与えた四球だった。長嶋(茂雄)さんが中前打を放って2死一、三塁。王(貞治)さんが右翼へ逆転サヨナラ本塁打を運んだ。これで流れが変わった。4勝1敗で7連覇を達成した。

 四球から流れが大きく変わった例だ。とにかく投手はマウンドに上がったら無四球を目指してほしい。打たれた、抑えたは結果論である。逃げての四球だけは絶対ダメだ。

日々進化するヤクルト村上

 阪神の大型新人・佐藤輝明が苦しんでいる。前半戦、阪神を引っ張ってきたが、ここにきて50打席連続無安打だ。でも別の新人が存在感を増してきた。遊撃の中野拓夢だ。24日、同点の9回1死満塁、丸佳浩の三遊間を襲ったゴロをダイビングキャッチ、すぐさま起き上がりバックホーム、三塁走者・増田大輝のスタートが遅れたこともあったがアウトにした。ファインプレーだった。翌25日は菅野から試合の行方を決める2点二塁打を放った。

 ヤクルトはなんといっても主砲・村上宗隆の活躍が特筆ものだ。本塁打38本で巨人・岡本和真に並び、打点も岡本の106に6点差と迫った。チーム同様すごい勢いだ。まだ21歳ながら日々進化している。

 優勝するチームには何度でも言うが勢いがあるし、勢いのある選手が出現する。

 巨人打線はここぞの一打はないもののつながりが出てきた。投手陣はとにかく無四球を目指してもらいたい。まだ21試合ある。勝負事は何が起きるか分からない。諦めるのはまだ早い。

 巨人は28日から中日(バンテリンドーム ナゴヤ)、DeNA(東京D)との6連戦。まずは目先の一戦を大事にトーナメント戦に臨む気持ちで戦ってほしい。

※巨人の四死球数は452でセ・リーグ最多、以下、広島・446、DeNA・442、と続く。 (記録は27日現在)

柴田勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会副理事長を務める。

デイリー新潮取材班編集

2021年9月28日掲載

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