吉田羊が語る「シェイクスピア劇への挑戦」 キャストは女性だけ、違和感を覚えた「俺」という一人称

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「俺」と呼ぶ違和感

 物語は古代ローマが舞台の政治劇。ブルータスの盟友で、初代皇帝の座を狙うシーザーをシルビア・グラブ(47)が、シーザーの部下のアントニーを松井玲奈(30)が演じる。ブルータスの友人のキャシアスに、歌舞伎俳優の松本白鸚の長女で女優の松本紀保(49)が起用されたことも話題を呼んでいる。

「キャストが女性だけというユニークな企画ではありますが、難しい挑戦でもあります。あまりに有名な作品なので、観客の固定観念を覆すのは容易じゃないと、いまから覚悟しています」

 連日の稽古には、新鮮な感覚で臨んでいると語る。

「最近は演技を一任されることが多くなって、厳しく演出される機会が減っていました。その意味で今回は、物作りの原点に立ち返ったように感じています」

 作品のテイストは昨今の世相を強く反映しており、

「ジェンダーレスという流れも意識しています。私も最初は自分を“俺”と呼ぶ一人称に違和感がありました。でも、演出の森(新太郎)さんが男女の役割を固定するような台詞をほとんどカットして、性別を超えた人間の物語として仕上げています。“人間を性別で判断したり区別したりするな”とのメッセージも込められた、既視感とは無縁の唯一無二のシェイクスピア劇になるはずですよ」

 そもそも原作の「ジュリアス・シーザー」は、登場人物の大半が男性だ。それだけに衣装は宝塚歌劇団のような男装になるのか。

「いえ、男女を超越した抽象的なものになる予定です。最初はしっくりこないかもしれませんが、5分ほどで慣れると思いますよ」

 シーザーが絶命の際に発する“ブルータス、お前もか”との台詞はあまりに有名。裏切者とのイメージも強い役どころについては、

「ブルータスは、多くのローマ市民が誠実な人物として愛した、私利私欲のない正義漢。優しい人柄で人望も厚い反面、それで自分の首を絞めたり、ここぞという時の詰めも甘い。そういうチグハグな人間臭さも魅力です。友人だったシーザーの暗殺を決意するまで、彼の心は複雑に揺れ動きます。細やかな心情を丁寧に演じて、等身大の『人間ブルータス』をお見せしたい」

週刊新潮 2021年9月23日号掲載

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