輪転機大手「東京機械製作所」の株買い占めで新聞社と政府が右往左往する理由
上層部が危機感
この数年、上場企業に対する敵対的な買収の動きが活発だが、現在、新聞メディアが強い関心を寄せる買収事案がある。投資会社「アジア開発キャピタル(ADC)」による新聞輪転機大手「東京機械製作所」の株式買い増しだ。
東京機械の輪転機は40社もの全国紙、地方紙が使っており、全国紙のベテラン記者は、「新聞社の経営に関わる問題として、警戒感を募らせているんです」と、語る。
この投資会社ADCには中国系の資金や仕手筋が関わっていると言われる。すでに東京機械株は4割近くの株式をADCに握られており、実質的に経営権が奪われるまで時間はかからないだろう。別の新聞社の経営幹部は、
「新聞社が東京機械から購入する輪転機は、補修がたびたび必要となります。ADCに買収されれば、中国などに関して都合の悪いことを記事にした場合、東京機械が行っていたような精緻な補修サービスが受けられなくなり、新聞発行の日常業務に影響が出るかもしれません」
と語る。政府もADCと中国マネーの関係に注目しており、「経済安全保障」の観点から危機意識を持って情報収集を始めている。
4倍近くまで高騰
東京機械は東京証券取引所1部上場の機械メーカーで、前身の創業は1874年までさかのぼる。読売新聞や朝日新聞、毎日新聞、産経新聞、日本経済新聞といった全国紙、北海道新聞、中日新聞をはじめとする地方紙などを顧客に抱え、日本で稼働する大型輪転機の4割が東京機械製とも言われる。
この東京機械株の買い占めが表面化したのは、7月下旬だった。ADC傘下で投資事業を手掛ける「アジアインベストメントファンド」は、それまで「純投資」としていた株の保有目的を「支配権の取得」に変更し、保有比率を8月16日時点で38.64%、9月6日時点で39.94%まで引き上げた。ADCがアジアインベストメント経由で、株を持つ形となる。
「支配権を巡って両社の駆け引きが激化していき、それに伴うように株価の変動も激しさを増しました。7月下旬には800円弱だった東京機械の株価は、9月9日にはなんと4倍近くの3300円台まで高騰したものの、その後は下落。まるで仕手戦を彷彿とさせるような展開になっています」(証券会社株式アナリスト)。
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