事件現場清掃人は見た 新型コロナで自宅療養中に浴槽で孤独死した「70代男性」

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 孤独死などで遺体が長時間放置された部屋は、死者の痕跡が残り悲惨な状態になる。それを原状回復させるのが、一般に特殊清掃人と呼ばれる人たちだ。長年、この仕事に従事し、昨年『事件現場清掃人 死と生を看取る者』(飛鳥新社)を出版した高江洲(たかえす)敦氏に、新型コロナで孤独死した70代男性について聞いた。

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 東京都内で新型コロナウイルスに感染して亡くなった人のうち、自宅療養中に亡くなった人は、今年に入って90人(9月16日時点)確認されている。そのうち、先月以降の第5波で亡くなった人は45人。ここへ来て急増している。

「先日、不動産会社から依頼がありました。新型コロナに感染して自宅療養中の70代の男性が、浴室の中で亡くなったそうです。死後数日経って発見されたといいます」

 と語るのは、高江洲氏。

「新型コロナウイルスで亡くなった方の部屋の清掃はこれが初めてでした。とはいえ、特別な準備はしませんでした。そもそも現場では殺菌を徹底していて、防毒マスクやゴーグルを着用しますから、装備はいつもと同じでした」

3つの位牌

 現場は、都内の2DKのマンションだった。

「亡くなった男性は、お風呂に入っている時に容態が急変し、そのまま亡くなったそうです」

 新型コロナの自宅療養者は、体温測定だけでなく、血中酸素飽和度を指で確認できる「パルスオキシメーター」が貸与され、1日に2回の測定が勧められている。体調が悪化した場合、すみやかに保健所などへ連絡することになっている。そもそもなぜ入浴したのかなど疑問は残るが、とにかく保健所などに連絡する間もなく亡くなったそうだ。

「浴槽の湯はためていたようですが、排水栓を緩く止めていたのか少しずつ抜けて空になっていました。もっとも、体液や脂が溜まり、虫がわいて蠢いていました」

 どの部屋も小奇麗に整理されていたという。

「お金には困っていないようで、大きな箪笥には、趣味の良い洋服が何枚もかけてありました。キッチンも清潔に保たれていました」

 高江洲氏は、大きな仏壇のある部屋が目に付いたという。

「掃除が行き届いた仏壇以外、その部屋には何もありませんでした。仏壇には3つの位牌があって、写真が3枚飾ってありました。おそらく、ご両親と先立たれた奥さんだったと思われます。毎日線香を焚いて、供養をしていたのでしょう」

 高江洲氏は、新型コロナで亡くなった人の遺品整理もしたことがあるという。

「1カ月前、30代のOLが新型コロナによって都内の病院で亡くなりました。ご遺族から遺品整理の依頼があったのです」

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