自民党総裁選10番勝負 最も激しい戦いだったのは田中VS福田VS大平VS三木

国内 政治

  • ブックマーク

【10番勝負】 菅義偉×岸田文雄×石破茂(2020年9月)

 安倍首相が再び病気退任したのちの2020年9月の総裁選では、一般党員投票するかどうかはそれぞれの都道府県の組織にまかされたが、菅義偉官房長官が一般党員投票でも石破茂、岸田文雄政調会長を圧倒し、本選挙では377票を獲得、89票の岸田、68票の石破に圧勝した。

 コロナ対策の継続を確保するための安全策であったが、総裁選挙での人気が維持できているうちの衆議院解散を自らの路線が成果を出してから問いたいというきれい事に酔って機を逃し、総選挙に打って出るタイミングを見つけられないまま退陣に追い込まれた。

 新しい総裁選びの過程で、国民の前で濃密な議論が行われることは、政策のイノベーションをこれまでの総裁選挙でももたらしてきたし、自民党の人気を回復させることにも貢献してきた。

 とくに、二人だけの候補だと、どちらがまだしもベターかという消極的な選択になりがちだが、今回のように四人くらい違うタイプの候補がそろうと誰かお気に入りの政治家がいるから盛り上がるものだ。

 また過去の例からすれば、敗者にも責任ある役職を与えることが、過去の派閥闘争の傷跡を治癒することにもなってきた。

 一方、菅政権の不人気を当てにするとか、ワクチンの接種遅れのように、野党がより進んだとり組みを主張しないどころか、慎重さを求めてブレーキをかけてきたことの結果まで政権のせいにして総選挙に望もうとしていた野党にとっては打撃だろう。

 野党には、反自民、反政権に頼らずより優れた政権構想を打ち出すことで政権回復を狙って欲しいし、野党の党首選挙も、もっとエキサイティングにする工夫も望みたいところだ。

八幡和郎(やわた・かずお)
評論家。1951年滋賀県生まれ。東大法学部卒。通産省に入り、大臣官房情報管理課長、国土庁長官官房参事官などを歴任。徳島文理大学教授。著書に『誤解だらけの皇位継承の真実』『令和日本史記』『歴史の定説100の嘘と誤解:現場からの視点で』など。

デイリー新潮取材班編集

2021年9月27日掲載

前へ 2 3 4 5 6 次へ

[6/6ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。