「八百板卓丸」って誰? トライアウトで巨人入り、1軍初打席ヒットの苦労人人生
9月15日、1人の無名の若武者が躍動した。東京ドームで行われた読売ジャイアンツ対横浜DeNAベイスターズとの一戦。読売が2点ビハインドで迎えた9回裏、1死一、二塁のチャンスの場面で代打に送られたのは、この日、入団後に初めて出場選手登録された読売の八百板卓丸(24)だった。緊迫の場面で横浜DeNAの守護神・三嶋一輝の2球目のスライダーを一振りで捉え、1点差に迫る中前適時打となり、プロ初打点もマーク。チームはこの八百板の一撃が呼び水となって7-6の大逆転サヨナラ勝ちを収めている。試合後にはプロ野球人生初のお立ち台にも上がった。
いきなりの活躍を見せた八百坂だが、よほどの読売ファン、プロ野球ファンでない限りは「誰?」状態だったはず。今回は、八百板の経歴やプロフィールを紹介しよう。
八百坂は1997年1月17日、福島県福島市生まれ。身長180センチ、体重82キロ。右投げ左打ちの俊足好打の外野手である。
小学1年のときから野球を始め、中学時代は内野手兼投手として3年夏の全国大会に出場している。12年春、高校は地元の強豪・聖光学院に進学すると、2年秋に外野手のレギュラーの座を掴み、秋の東北大会に出場(1回戦で敗退)。翌3年春も東北大会に駒を進めると、初戦の盛岡大附(岩手)戦でチームは1-2のサヨナラ負けを喫したものの、プロ注目の最速150キロ右腕・松本裕樹(福岡ソフトバンク)から3打数2安打をマーク。うち三塁打1本を放っている。
迎えた3年最後の夏の福島大会では、レフトを守り不動の1番打者として出場。全6試合でヒットを放ち、24打数13安打で打率5割4分2厘を記録したほか、5打点10得点4盗塁と大暴れの活躍でチームの8年連続夏の甲子園出場に貢献した。
そして迎えた本番の夏の甲子園。初戦から神戸国際大附(神戸)を2-1、佐久長聖(長野)を4-2、近江(滋賀)を2-1で勝利し、チームは準々決勝に進出する。だが、健闘虚しく日本文理(新潟)に1-5で敗退し、ベスト4入りとはならなかった。それでも八百板は全4試合で15打数8安打と打ちまくり、5割3分3厘という高打率を記録。チームをベスト8入りに導いたのである。
ミート力だけではなく
なかでも注目すべきは8安打の内訳が左2・中4・右2と広角にヒットを打ち分けている点だろう。2回戦では高めスライダーを左中間に弾き返す二塁打など2安打。3回戦では真ん中から内角寄りの直球を捉え、右翼フェンス際まで飛ばす二塁打を放っている。敗れた準々決勝の日本文理戦でも三遊間への内野安打、外高め直球と外低め変化球をそれぞれセンター前に打ち返し、プロ注目の本格派右腕・飯塚悟史(横浜DeNA)から3安打を記録しているのだ。
八百板卓丸という選手はミート力のある左の好打者ということが分かる。センター中心の打撃が持ち味だが、球が甘く入れば左右に長打を放てる。高3夏の公式戦10試合で喫した三振がわずか1というのも特筆に値しよう。
バッティングだけでなく、走っても50メートル6秒フラット、一塁到達タイムは4.1秒台から4.2秒台とまずまずの俊足ぶり。夏の福島大会では6試合で4盗塁を決めている。
守っても夏の甲子園4試合で無失策。特に3回戦の近江戦では6回表の守備で左翼フェンス際への大きな飛球を背走キャッチするファインプレーを披露している。10月に行われた長崎国体1回戦の海星(長崎)戦でも、3-2と1点リードして迎えた9回表の守備で1死一、二塁のピンチの場面でのことだ。この回にレフトからライトへ回っていた八百板が右前に落ちようかという痛烈なライナーを体を投げ出しながらダイビングキャッチし、チームを救ったのだった。まさに守備範囲の広さが外野手の見せ場だと言わんばかりのスーパープレーであった。
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