就活女子大生、乳児殺害遺棄に懲役5年 法廷で明かされた“ジャニーズオタク”と“性の悩み”
セクシャルマイノリティの悩み
子供の父親も、名前すら知らない風俗店の客だった。同居している母親が妊娠を疑い、妊娠検査薬を購入して検査させたが、「妊娠していない」とウソをつく。その後、母親に促され神戸市の産婦人科を受診し、医師から中絶が不可能な妊娠22週を過ぎている事実を知らさてもなお、母親にしらを切り続けていた。出産・殺害後に帰宅した時は、「用をたしたら、お腹がへっこんだ」と伝えたという。
母親に打ち明けられなかった理由について、「風俗の仕事について言いたくなかった」と語った北井被告。だが、検察官から「母親はすでに妊娠の時点で風俗の仕事について知っていたはずだ」と問い詰められると、「知っていた」と認めた。
では何を知られたくなかったのか、と追及する検察官に対して、北井被告が訴えたのが、風俗の仕事を始めた理由である「セクシャルマイノリティの悩み」であった。「風俗の話になると、なぜ風俗を始めたかを話さなければならなかったから」。具体的には、弁護人の質問に答えるかたちで「自分はアセクシャルという性的な欲求を感じないタイプだ」と述べた。「友達の恋愛話などにまったく共感ができなかった。経験をいっぱいすれば良さがわかるのではないかと思い、風俗の仕事を始めた」と。
「北井被告の話には不可解な点が多かった。妊娠中には、お腹を蹴る子供がかわいいと思っていて、名前まで考えていたとも語っていたのです。裁判官から『自首を考えなかったのか』と問われ、『自首ってなんですか』と問い返し、『そんな制度があるなんて知らなかった』と答えた場面もありました」(同前)
空白だらけのエントリーシート
弁護側は最終弁論で、北井被告が就職活動で企業に提出したエントリーシートを取り上げた。名前と経歴だけが書かれ、自己PRと志望動機の欄が空白になっているお粗末なものだ。結局、遺棄翌日に受けたという空港内のホールスタッフのほか、大手航空会社子会社の空港グランドスタッフなど、片っ端から航空関連企業を受けたがすべて不採用で、地元の衣料品店でアルバイトをしていたという。
「弁護人は、このエントリーシートをもとに、彼女は知的能力が低く、周囲に相談する相手も少なかったと情状酌量を訴え、執行猶予付きの判決を求めた。一方、検察側は、『自己中心的で極めて身勝手な動機』として、懲役7年を求刑していた」(前出・記者)
判決で裁判長は「強い殺意に基づく執拗かつ惨たらしい犯行」「身勝手で短絡的な動機」と指摘し、5年の実刑判決を言い渡した。
最終意見陳述では涙を拭いながら「赤ちゃんに申し訳ない気持ちでいっぱいです」と述べていた北井被告だったが、判決公判では、無表情でじっと裁判長の話に耳を傾けていたという。
尊い命を救えなかったことが悔やまれてならない。
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