「反社とは解約も」東京ガスの新方針に警察幹部から驚きの声 今後のターゲットは?

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準構成員まで書いてある組織図が

「小指が欠損していたり、落書き(入れ墨)がちらっとでも見えたりしたら、自宅に伺って調査しますよ」

 そう話すのは、ある警察OBだ。このOBは暴力団を取り締まるいわゆる「マル暴刑事」としての経歴が買われ、退職後に保険代理店に再就職した。今の職場で、もっぱら任されるのは、「曰くありげな顧客」の対応。つまり、暴力団ら反社会的勢力が契約者にいないか調査し、仮に反社が見つかれば、契約を解除するのだ。

「解約や契約拒否を申し出ても、一度も、もめたことはありませんよ。むしろ、こちらが『警察で暴力団の取り締まりをやっていました』と言うと、自ら契約の解除を申し出る人が多いですね。ヤクザも分かっているというか、つまらないことでもめたくないんでしょうね」

 このOBによれば、保険代理店の本店クラスになれば、警察署の副署長などを歴任した幹部クラスを、小さな保険代理店でもマル暴刑事だった警察OBを、いわゆる「天下り」として再就職させている。保険代理店ですらこうなのだから、メガバンクや件の東京ガスが、大幹部を天下りさせていることは言を俟たない。

「現役警察官だった時代には年に1回、準構成員まで書いてある組織図が配られるんです。再就職先ではそういう資料も最大限利用して、反社が入り込まないようにしていますね。当然、再就職先もそのような“強み”に期待して天下りを受け入れているわけです」

自宅に組関連の名刺が

 一方、取り締まる側として長年接してきたからこそ、不憫に思ってしまうこともあるという。

「ある時なんか、子どもさんのために、生命保険と連動の積み立てをしてきたお客さんがいたんですが、自宅に伺うと、組関連の名刺なんかが置いてある。聞くと、『●●組の構成員です』と言うんです。それを聞いてしまったら見逃すわけにはいきませんから、結局、解約金をお支払いして、契約解除になった。そういう目に遭うのがいやなら、暴力団を辞めれば良いと言えばそれまでなんですけど、昔は『必要悪』という言葉があったように、暴力団も容認されていた側面が無いわけではなかったですよね。それに本人ならいざ知らず、奥さんや子供までにも不利益をかぶせてしまうのは、ちょっと可哀そうだなと同情してしまいます」

 今回の東京ガスの約款変更を額面通りに受け取れば、仮に暴力団組員が自宅のガスを自分名義で契約していれば、妻子らの同居人がいてもガスの供給を止められてしまう。憲法では「全ての国民は健康で文化的な最低限の生活を営む権利を有する」と保証しているが、ガスのような生活インフラを、銀行口座や保険と同等に扱うことは妥当なのかは意見の分かれるところだろう。

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