「聖徳太子の偽1万円札」を使って逮捕されたべトナム人 「北関東」「タンス預金」が関係か

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偽造の豆知識

 そして、こう続ける。

「例えば、複写機でお札を複写できないのは、ユーリオンという技術を使っているから。これは札の模様に混じった黄色い点と、その点から延びる線の方向のパターンが一致したら、画像処理ソフトウェアやカラー複写機が“偽札”だと認識する。豆知識だね。逆にここを潰せば、複写できる。こんな感じで、日本人の偽造師が日本語も話せるベトナム人に指導すれば、彼らも偽の1万円札を作れる集団になるだろうよ。

 ただ、今回の件はおそらく、ベトナム人不良グループが偽造したものではないと思う。旧1万円札は以前、ものすごく偽造されていたんだ。新たな1万円札が出たために使えなくなって、在庫処理に困っていた日本人の偽造集団が、万札を使って品物や釣銭を得るようにベトナム人不良グループをうまくたぶらかしたんじゃないかな。日本人よりも簡単に騙せて、安い報酬で動いてくれそうだからね。不景気だから、双方、金に困っているだろうし」

 S氏の話が事実とするなら、ベトナム人逮捕時の目撃談にあった「とても悲しい表情」は、日本人に利用された恨めしい気持ちといったところだろうか。

ドロップアウトは必然

 日本は現在、世界有数の移民受け入れ国となっている。2019年に出入国管理法を改正し、企業の人材不足解消のため、外国人労働者を急速に受け入れるようになった。日本人がやりたがらない重労働を長時間、それも低賃金でやることを、外国人労働者に求めたのだ。その中心的な存在が、ベトナム人労働者だった。

 劣悪な労働環境で働くベトナム人労働者の一部が、ドロップアウトをして不良化するのは必然とも言える。さらには、コロナの感染拡大で打撃を受けた日本企業の多くは、ベトナム人労働者をさらに過酷な労働状況に追い込むか、解雇をして切り捨てていった。ベトナム人たちがマフィア集団を結成し、犯罪行為をするのは日本社会が促した結果なのではないだろうか。

 むろん、ベトナム人が偽札を使用した犯罪行為は決して許されることでなく、厳しく断罪されるべきだ。けれども、ベトナム人不良グループを凶悪化させないためには、日本社会がベトナム人との共生に誠意を持って取り組んでいくことも必要である。

真樹哲也
1985年、北関東生まれ。裏社会に入り込んで取材をし、アンダーグラウンド記事を書くことを得意としている。近著『ルポ外国人マフィア 勃興する新たな犯罪集団』(彩図社)が好評発売中。

デイリー新潮取材班編集

2021年9月22日掲載

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