結婚20年の妻が突然の駆け落ち不倫… 苦悩の夫が語る「まさかの相手」と「疎外感」
〈愛する人がいます〉
それから10年間、店はうまくいっていた。それなのに長女が20歳、次女が18歳になったとき、遙香さんは突然消えた。
〈ごめんなさい。残りの人生を考えたとき、こうするしかありませんでした。愛する人がいます。いずれ連絡します〉
そう書かれた手紙だけが残されていた。宏一さんはパニックになった。
「母に、娘たちにどう説明すればいいかわからない。愛する人ってなんだよ、不倫していたのか。なにより僕はこの先、どうやって生きていけばいいのか。でも店は開けなければとも思った。何をどう考えたらいいか、まったくわからなくなりました」
不倫した相手は…
ちょうど夏休みだったこともあり、ランチは大学生の長女が手伝ってくれた。自分ができないときは友人をバイトに入れた。宏一さんは遙香さんがいなくなった事実を認めたくなくて、客に聞かれると「ちょっと実家に帰っている」と説明した。
夜の営業で人が途切れたとき、手伝っていた長女が「お父さん、大丈夫?」と声をかけてきた。ろくに眠ることもできなかった宏一さんは、生返事をしてため息をついた。
「居場所はわからないけど、お母さんは元気だから安心してと長女が言うんです。知っているのかと尋ねると、『お母さん、駆け落ちだよ』と。頭にカッと血が上って、体中の毛穴が開いたような気がしました。『相手は男じゃないの』と長女は続けて言ったんです。妻は女性と駆け落ちしたんだそうです」
そういえば、と宏一さんには思い当たる節があった。夜の常連さんの中に、遙香さんと仲良くなった女性がいるのだ。
「会社勤めの女性、涼子さんと言ったかなあ。確かに遙香が数年来、仲良くしていました。店にもよく来てくれたし、休日に涼子と一緒に買い物に行くという話を聞いたこともあった。長女と3人で食事に行ったこともあるようです。長女が言うには『ただの女友だちではなかった』と。ショックでした。妻が不倫して相手が女性だったなんて……」
書き置きにあった「愛する人」は女性だったのだ。それにしてもなぜ駆け落ちをしなければならなかったのだろうと、宏一さんは不思議に思った。
「長女いわく、『相手も家庭があって、夫からDVを受けていたみたい』と。とにかく一度、遙香と話したいと思い、長女に連絡をとってもらいました。だけどどうして僕が妻と話すのに長女を介さないといけないのかわからない。その点では妻に対して腹が立ちましたね。オレたちはそんな脆い関係だったのか、と」
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