「コロナ自宅療養者を診たいのに診させてもらえない…」 医師が訴える“医師会の壁”
医師会に所属しているのに…
さらには医師会に所属している仲田医師でさえも、自宅療養者の診療に当たることができないというから驚きである。後述する理由により、港区で開業する仲田医師の籍は、現在、新宿医師会に置かれているのだが、
「新宿区に自宅療養者の診察をしたいと申し出たのですが、断られてしまったのです。“すでに特定の病院に業務委託をしているから”というのが理由です。私の病院は港区と渋谷区と新宿区の境に位置しているのですが、港区と渋谷区は、その区の医師会に所属していないことを理由に、やはり往診をさせてもらえない。もともと往診には“16キロルール”というものがあり、これ以上離れた地域への往診は原則禁止されています。逆にいえば16キロ以内の往診は可能なわけですが、コロナ禍ではそれができないのです」
東京都福祉保健局感染症対策部に聞くと、
「都は東京都医師会に業務委託しており、そこから先の判断は地域の医師会の判断になります」
との答えが返ってきた。
20年ぶりの選挙
医師会をめぐるこうした構造を仲田医師が批判するのには、こんな理由もある。
「2016年、当時は新宿区で開業しており、新宿医師会および東京都医師会の会員でした。医師会というものを知りたくて、日本医師会代議員選挙に立候補しようと思ったのです。当時、立候補するには日本医師会の会員2名の推薦が必要でした。そこで勤務医の友人に頼んだのですが、『そんなことをしたら院長が地区医師会会長から呼び出されて怒られる』と引き受けてもらえませんでした」
どうにか推薦人を見つけ候補者になれたが、結果は落選。これが20年ぶりの選挙になったというのだから、いかに医師会が身内の互助で成り立ってきたかを物語るエピソードである。
「その時の立候補者名簿が手元にありますが、私以外の候補者の欄には、推薦人の1人に当時すでに東京都医師会の会長になっていた尾崎治夫さんの名前が必ず載っているのです。候補者40名のうち、尾崎さんが推薦人でなかったのは2名。私と尾崎さんご本人だけです。こんなやり方をしていては、医師会の体制は変わりませんよね」
なお、後に仲田医師のクリニックが現在の港区に移転した際、改めて港区医師会に入会を希望したが、断られたという。表向きの理由は新型出生前診断を行っていることだったが、尾崎会長の怒りを買ったためだと仲田医師は考えている――。
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