コロナ感染経路、日本の認識は世界の非常識 今後は「熱交換換気」と「ヨウ素液うがい」

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海外では「接触感染は稀」との認識

 このように新型コロナウイルスの感染状況を予測するのは困難だが、筆者は「日本における新型コロナウイルスの感染経路に関する認識は、国際的な常識とかけ離れている。それが、有効な対策を講じることができない原因なのではないか」と考えている。

 厚生労働省は、新型コロナウイルスの感染経路を飛沫感染と接触感染だと説明している。

 飛沫感染は、感染者のくしゃみなどで出る直径5マイクロメートル以上の飛沫を吸い込み感染する。飛沫は1~2メートル先まで届くという。接触感染は、感染者の飛沫が周りの物につき、それに触れた手で口や鼻を触って感染する。日本では相変わらずアルコール消毒がさかんになされているが、海外では「接触感染は稀だ」との認識が強まっている。

 厚生労働省は「空気感染は起きていない」としている。だが世界保健機関(WHO)は昨年7月、新型コロナウイルスの空気感染の可能性を初めて認めた。「換気の悪い屋内で感染が起きやすい」という疫学的な結果が出たからだ。換気の善し悪しに影響を受けるのは空気感染であり、飛沫感染や接触感染ではない。デルタ株が主流となった今年4月以降は、「空気感染が主な感染経路である」と認識されるようになっている。

空気の流れが悪くなるアクリル板

 空気感染は、直径5マイクロメートル以下で乾燥した飛沫核が長い間(3時間以上)空気中を漂うことから、3メートル以上離れていても感染する(水ぼうそうなどがこれにあたる)。すれ違っただけで感染するわけではなく、感染者の近くにいる人ほど感染しやすい。飛沫感染と同様だが、対策をしっかりしないと感染リスクは高くなる。

 日本でも8月27日、本堂毅・東北大学准教授を始め約40人の専門家らが、「空気感染が主な感染経路という前提に立ってさらなる感染対策を求めるべきだ」との声明を出した。

 政府がこれまで推進してきた「3密回避」対策は空気感染のリスクを軽減する効果を有するものの、空気感染に焦点を当てた対策を徹底すべきだというわけだ。

 パンデミック以降、マスク生活が当たり前になったが、声明では「ウレタン製や布製マスクは空気感染に無力であり、不織布マスクの着用を徹底すべきだ」としている。さらに、「1時間に2回程度の短時間の窓開けでは換気対策として不十分だ」として、「冷暖房効果を維持しやすい『熱交換換気』などの活用を検討すべきだ」と提言している。

 飲食店ではアクリル板をテーブルの中央に置くところが増えたが、これにより空気の流れが悪くなるケースが多いと指摘されている。二酸化炭素センサーを見ながら定期的に「空気の流れ」をつくったほうがいいだろう。

 新型コロナウイルス対策として「うがいより手洗いが重要」とされてきたが、空気感染が主要な感染経路だとすれば、「ヨウ素液によるうがい」が有効だ。ヨウ素液を満たした試験管では新型コロナウイルスは10秒で不活化する(死ぬ)ことがわかっている。

 政府は行動制限緩和を開始する前に実証実験を行うとしている。空気感染を念頭に置いた対策の効果について重点的に検証すべきだと思う。

 行動制限が緩和される11月は今よりも呼吸器感染症が流行しやすい時期だ、だが科学的に合理的な対策を実施すれば、人流を制限しなくても感染拡大を防止できるのではないだろうか。

藤和彦(eye) 経済産業研究所コンサルティングフェロー。1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮取材班編集

2021年9月21日掲載

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