元サッカー日本代表・鈴木啓太が「うんちバンク」を創設? アスリートの便を分析してサプリ開発

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マスターズ選手も対象に

 こうしたデータをもとに、AuBはサプリメント「AuB BASE」を開発した。アスリートの腸内フローラを分析したなかで酪酸菌をメインに乳酸菌やビフィズス菌など29種類をバランスよく取り入れたサプリメントをアウトソースで製造している。1カ月分5918円。定期コースを選ぶと初回は3218円(共に税込)となる。

「AuB BASEは瞬発的に身体に効くようなものではなく、継続して腸内細菌を安定させることを期待しています。たとえば酪酸菌はチーズに含まれているといわれます。でも、豊富に摂ろうとすると、大量にチーズを食べなくてはいけません。それで満腹になってしまうと、ほかの栄養や菌を摂りづらく、腸内フローラの多様性が維持できません。サプリメントなら、少量で多くの酪酸菌を摂取できます」

 AuB ASEはさらに質の向上を目指している。

「僕自身AuB BASEを飲み、いいコンディションを維持しています。でも、ほんとうにサプリのおかげなのか――、気になって1週間やめてみると、うんちの出かたがいま一つ満足できないものになりました。このように自分の身体でいろいろと試しています」

 新しい検体にも期待をしている。

「今、マスターズ陸上の選手のうんちを分析させていただいています。マスターズは一年を通して全国で大会が行われますが、70歳を超えても100メートルを14秒で走る選手が何人もいます。すごい身体です。まだ分析中なので具体的なお話はできませんが、年齢を重ねても高い運動能力を維持している人たちの腸内細菌には、オッ!と驚く注目すべき点もあるんですよ。もっと分析してみます。これからどんなことがわかるか、楽しみにしています」

 うんちには強いにおいもあり、きたないものとしてどうしても目を背けがちだ。しかし、そこには私たちが健康を維持するための大切な情報がつまっている。

「まず、自分や家族のうんちを毎日見ていただきたい。排泄したらすぐに流さずに、チェックしていただきたい。結婚したころ、僕は太いバナナシェイプのうんちが出ると、妻に見せました。妻にもどのようなうんちが出ているかとしつこく聞きました。健康のバロメーターだから、と。女性ですから、もちろん嫌がられました」

 それでも、粘り強く観便の大切さを説いた。

「妻もうんちを見る習慣がつきました。僕が子どものころに、母親が僕に対して説いていた心がけを今度は僕が妻や12歳と8歳の娘二人にもやってもらっているんですよ。状態のいいうんちを出す意識をもつと、栄養バランスのいい、品数の多い食事を摂ることを心がけるようにもなります。今は家族全員が毎日健康的なうんちをして、元気です」

 観便をすると食生活への意識も高くなり、健康へのプラスのスパイラルが生まれるのだ。

鈴木啓太(すずきけいた)
AuB代表取締役。元プロサッカー選手。Jリーグ、浦和レッドダイヤモンズで16年間プレー。日本代表選手としても28試合出場。2015年のシーズンで引退。同年にベンチャー企業、AuBを創業。アスリートの腸内細菌を分析し、サプリメントAuB BASEを発売。現在は自社ECサイトAuB STOREにてサプリメントやプロテインを販売。

神舘和典(こうだてかずのり)
うんちジャーナリスト。著述家。1962年東京都生まれ。音楽をはじめ多くの分野で執筆。『墓と葬式の見積りをとってみた』『新書で入門 ジャズの鉄板50枚+α』など著書多数。共著に『うんちの行方』(いずれも新潮新書)。

週刊新潮 2021年9月16日号掲載

特集「元サッカー日本代表が『うんちバンク』創設 一流アスリートの『腸内細菌』から誕生した『頑健サプリ』」より

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