ついにメスが入った日大事業部の闇 ターゲットはアメフト“危険タックル問題”で暗躍の理事

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日大事業部の締め付け

 そのころ、「スポーツ日大」という大きな看板が、プロ野球の球場内をはじめ至るところで目立っていた。飛行機の機内誌をはじめメディアにも多くの出稿があった。これらの広告業務を請け負っていたのが、A理事の実姉が経営する会社だ。日大の相当な額の支出がこの会社に流れるビジネスの構図も明らかになった。それ自体、違法性はないが、この広告宣伝費の流れに日大事業部が絡み、正当な支払いのほかに「一部資金を私的に還流させる仕組みを作っているのではないか」との証言や憶測が囁かれた。日大がなぜA理事の姉の会社に広告宣伝の代理業務をほぼ全面的に任せているのか。他社を排除する状況について大学側も田中理事長も一切説明していない。そのことがまた疑惑を深める形になっていた。

 日大の教授に訊くと、研究費で何かを購入する場合は「できるだけ日大事業部を通して買うよう締め付けがあった」と言う。全学部ではないが、取材した文科系学部ではその締め付けはかなり厳しかったという。

 さらに、井上コーチの実家が経営する菓子店はA理事が所有するビルに店舗を構えていた。ここまでの濃密な関係がわかれば、田中理事長がこうした関係を容認し、了解していたと理解するのも常人の自然な解釈だ。その裏で不正なバックマージンなどが理事たちに還流されていた証はなかったから、もちろん断定できず今日に至っていた。

覚悟を試すためのタックル指示か

「危険タックル問題」は、被害選手の父親の刑事告訴に対し、検察側が「違法行為と認定できず」としたため、内田監督も井上コーチもシロとなり、後に大学側とも和解。いずれも大学の職に復帰している(内田氏はすでに停年退職)。

 当該選手が、弁護士を伴って自ら記者会見を開き、謝罪をし、報道陣の質問に応じる姿は見る者に衝撃を与えた。だが、ずっと紹介してきた日大事業部のカラクリと当該選手の記者会見をひとつに結んで解釈する動きはあまりなかったように思う。

 私は取材を重ねるほど、ふたつは別々でなく、まさに一体だとの感を深めた。一体というのは、監督・コーチが選手に危険なタックルを指示し、事件が顕在化するとA理事まで登場してもみ消しを図ったのは、あのタックル指示が単に「アメフトの試合で勝つため」「来るべきシーズンで戦力を充実させるため」ではなかった。当該選手は日大事業部の裏側を形成する面々に見込まれ、新たな人材としての資質と覚悟を試されたのではないかという推測だ。そう解釈すると、すべてがつながるように思うのだ。

 井上コーチはまさにその覚悟を持って内田監督に従順であり続けた。当該選手は、世間の非難に直面し良心の呵責に苛まれた。それを阻止するA理事に代表される「組織」。その泥沼から抜け出すには弁護士の助けがどうしても必要だったし、自分の顔と名前を世間に晒す必要があった。

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