河野太郎の出馬表明は早すぎた?ジジ転がしの「野田聖子」と計算狂った「石破茂」の明暗

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石破と麻生の不仲

 一方で、このドラマの舞台に上がりたくとも上がれなかったのが、石破茂だ。

 告示日2日前の15日水曜に出馬断念の会見を開いたが、こちらの評判は芳しくない。自身の派閥である水月会もまとめきれず、腹心と目された平将明は早々に河野支持を表明。派内重鎮の鴨下一郎も、石破の出馬に反対した。
「鴨下さんが反対したのが致命的だった」と自民党議員は語る。テレビなどに積極的に露出したが、「白紙」とばかり口にする姿に、前出の議員は「自分のグループもまとめきれないのに、テレビに出れば人気が高まると勘違いしている」と顔をしかめた。

 石破は元々、こう考えていたようだ。

 今回の総裁選では菅が再選され、自民党は来たる総選挙で議席を減らす。そうなると早晩、再度の総裁選が行われるはず。その時こそ自分の出番だ、と。

 菅が突然退陣を表明したことで、目算が狂ってしまったことになる。

 麻生との不仲は自分でも認めている。先日、テレビのインタビューで麻生との関係を聞かれ、自らが農水大臣だった2009年に当時の麻生総理に退陣を迫ったこと、それが元で関係悪化したことを告白した。

ポストを与えてやったのに…

 実は、これには前段がある。

 石破・麻生がともに立候補した2008年の総裁選時のことだ。麻生の当選が確実視される中、そろって出かけた地方遊説先で、石破はいかに自分が農政に詳しいかを麻生に力説し、農水大臣の座を射止めようと懸命に働きかけた。

 麻生にしてみれば、希望通りのポストを与えてやったのに、一年も経たないうちに退陣しろと言われて怒り心頭だったろう。

 石破は今回の総裁選で結局、肝心の大舞台に上がることはできなかった。

 大河ドラマは、登場人物それぞれに魅力と個性がある。

 地味だが歴史を改革した者、派手なキャラクターで常に人気を誇る者……岸田支持者の中には、彼を源頼朝にたとえる人もいる。頼朝は地味で不人気だがコツコツと当時としては画期的な武家社会を作っていくタイプだった。言動が派手で人気が先行する河野は義経か。源氏が天下を取る過程では、巴御前や静御前らの登場も花を添えている。

 私たちは歴史の多様性の中に共感や同情を持つのではないか。

 だからこそ、総裁選4候補には、ハリボテの演技ではなく骨太の政策論議そして権力闘争を望みたい。政治は究極的には権力闘争だし、激しい権力闘争が政治家を鍛え上げることを歴史は証明している。

 そして自民党の人々は、人間ドラマの中で何が起きたかを知り、歴史に学ぶ賢者となってほしいのだ。

武田一顕(たけだ・かずあき)
元TBS北京特派員。元TBSラジオ政治記者。国内政治の分析に定評があるほか、フェニックステレビでは中国人識者と中国語で論戦。中国の動向にも詳しい。

2021年9月17日掲載

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