選択的夫婦別姓を自民党総裁候補はどう考えているか 地方議会の「意見書」に世論調査の改ざんデータが発覚

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反対でぶれない高市氏は「旧姓の通称使用」を後押しする法律案作成

 一方、左派系マスコミから敬遠されがちな高市氏。9月8日の出馬会見でも明言したように、憲法改正や男系による皇位継承とともに、選択的夫婦別姓制度に反対するスタンスは一貫している。高市氏は以前から、この制度が本質的に戸籍の廃止や「個人籍」につながる恐れがあることや、夫婦別姓が子どもの姓を不安定にすることに警鐘を鳴らして来た。対案として、旧姓の通称使用を法的に後押しする「婚姻前の氏の通称使用に関する法律案」を自ら作って自民党法務部会に出したのも高市氏である。

 テレビ番組などで左派系の識者や司会者から集中砲火を浴びても少しも発言がぶれない高市氏の姿勢は今回の総裁選でも好感を持たれている。ところが出馬宣言の直後、テレビ朝日の羽鳥慎一モーニングショーで玉川徹氏が「高市さんは保守の中でも右側なんですね。要するに右翼、右翼層を河野さんから取るっていうことだと思う」とこき下ろした。高市氏を右翼だと言っているに等しい。個々の政策に理屈で批判するならともかく、「右翼」と言う悪意に満ちた言葉を使って相手を“論破”したような気になっているのが情けない。これでは議論も何もあったものではない。かつて、「憲法改正」という言葉を口にするだけで、右翼と罵(ののし)られた窮屈な時代があった。自省を込めて言うのだが、いまだにこうした古い手法を使う人物がいるとは驚きだ。スタジオに呼んで堂々と攻めればよいではないか。

野田氏は何の根拠も示さず「世の中は圧倒的に(選択的夫婦別姓)容認」

 ぎりぎりになって出馬を決めた野田聖子氏。以前から選択的夫婦別姓の熱心な推進派だが、今年4月14日のNHKの「政治マガジン」では、過去の議論を振り返りながら「(現在は)それがもう通称使用というところで、別姓は容認なんですよ」と語っている。なぜか、旧姓の通称使用を「別姓容認」だと言う。また、「世の中は圧倒的に容認なのに、自民党だけが何かすごく違う国の人になって――」とも話している。どの数字をもって「世の中は圧倒的に容認」と言うのだろうか。まさか、前述の地方議会の意見書と同じように内閣府の世論調査結果を水増ししているとすれば、とんでもないことだが。

椎谷哲夫(しいたに・てつお)
  ジャーナリスト(日本記者クラブ会員)・皇學館大学特別招聘教授。 昭和30(1955)年宮崎県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、早大大学院社会科学研究科修士課程修了。元中日新聞社(東京新聞)編集委員。警視庁、宮内庁、警察庁担当を経て販売局次長、関連会社役員等。著書に『皇室入門』(幻冬舎新書)など。

デイリー新潮取材班編集

2021年9月17日掲載

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