選択的夫婦別姓を自民党総裁候補はどう考えているか 地方議会の「意見書」に世論調査の改ざんデータが発覚

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 事実上の次の日本の政治リーダーを決める自民党総裁選が始まった。岸田文雄、高市早苗、河野太郎、野田聖子の四氏による混戦の議論は経済再生、コロナ対策、安保・防衛、憲法改正、皇位継承問題など多岐にわたる。その陰に隠れて目立たないが、もう一つの大きな論点として、日本の家族制度の根幹に関わる「選択的夫婦別姓制度」の導入問題がある。推進派が押せ押せムードで実現をめざしているが、実はここに来て、さまざまな問題点があぶり出されている。その具体的事実を明らかにするとともに、今回の総裁選で各候補がどのようなスタンスに立っているのかを見てみたい。

「しずかちゃん」が「のび太」の姓にしたことを批判する夫婦別姓派の“正体”

「選択的なのだから、別姓にしたい人がいるのなら認めてあがればよいではないか」と言われると、納得してしまう人が少なくないかもしれない。自分は同姓がいいけれど、そういうことなら「まっ、いいか」というわけである。だが、これには大きな落とし穴がある。夫婦や家族の姓が「同姓」でも「別姓」でもよいということになると、これまでは当たり前だった「姓(苗字)は家族共通の呼称」という概念が成り立たなくなってしまう。同姓夫婦(家族)と別姓夫婦(家族)が混在するわけだから、「姓」と「名」を合わせたものが個人の呼称であり、同姓夫婦は「たまたま姓が同じ」ということになる。行政上も、そういう扱いにしないと混乱してしまう。だから、同姓家族とわかっていても「○○さん宅」という言い方は次第に憚(はばか)れるようになるに違いない。

 最も怖いのは、同姓を「時代遅れ」と揶揄するような風潮が生まれないかということだ。昨年秋、ドラえもん50周年を記念した「STAND BY ME ドラえもん2」いう映画が公開された。ここでは、しずかちゃんが「野比のび太」と結婚して「野比」姓になるのだが、「しずかちゃんはのび太に媚びた」などと批判するツイッターへの投稿が相次いだ。漫画の世界では、既に同姓家族に対するこんな“攻撃”が始まっているのだ。現実に選択的夫婦別姓が制度化されたら、この程度ではすまないかもしれない。「漫画だから」と鷹揚に構えてはおれない薄気味悪さを感じるのは筆者だけだろうか。

選択的であっても、夫婦別姓の導入がすべての国民に影響してくる理由

 ところで、選択的夫婦別姓派による民法改正案では、法施行後の一定期間、既婚者(同姓)も別姓に移行することができるようになっている。マスコミに煽られて別姓に移すのが一種のブームになり、中年や熟年の夫婦が我が子を巻き込んで揉めるケースが増えるかもしれない。話し合いが決裂していわゆる熟年離婚が増えることも考えられる。子どもを含むすべての国民が「さあ、あなたはどうする」と選択を迫られるのだから、そうなっても仕方がない。選択的夫婦別姓問題は決して他人事ではないのだ。

 夫婦別姓は必然的に「親子別姓」にもなる。そうすると、生まれた赤ちゃんの姓を夫婦のどちらの姓にするのか、それをいつ決めるのかという、やっかいな問題が起きる。立憲民主党などの議員が作った法案は、夫婦で決められなかったら家庭裁判所に頼むということになっている。しかし、親が決められないのに、どうやって裁判官が決めるというのか。複数の子がいる場合、姓を統一するのか否かという難題もある。それほどにややこしい制度なのだ。簡単に「選択的だからいいじゃん」と割り切ることができない理由がおわかりだろう。

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