戸籍の読み仮名法制化で「キラキラネーム」議論 女の子人気1位「陽葵」は何と読む?

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 今月7日、上川陽子法務大臣は、戸籍に読み仮名を記載するための検討を法制審議会に諮問することを明らかにした。今年1月から「氏名の読み仮名の法制化に関する研究会」で検討を重ねており、2023年の法制化を目指す見通しだ。ここで問題の1つになるのが、漢字本来の読み方とは異なる読み方をする「キラキラネーム」をどこまで許容するかという点である。命名研究家として、12万人以上の名づけ相談に応じてきた牧野恭仁雄氏に、今回の議論と最近の名づけ事情について解説してもらった。

女の子1位は「陽葵」

 戸籍に読み仮名を記載することに関しては、過去3回、当時の法務大臣の諮問機関に設置された戸籍制度に関する研究会で検討されたものの、「慎重に検討すべき」などとして制度化は見送られてきた。

 その必要性としては、情報システムにおける検索及び管理等の能率を上げることだけでなく、読み仮名をマイナンバーカードなどの公的な身分証に記載することで、正確に氏名を呼称することが可能になること、各種手続きの不正防止を補完することなどが挙げられる。

 ここで問題となるのが、漢字本来の読み方とは別の読み方で読ませる、いわゆる「キラキラネーム」をどこまで許容するのかということだ。先の研究会では「音読みや訓読み、慣用による読み方に限る」という案や、「命名権の乱用や公序良俗に反する読み方は認めない」という案が検討された。

 例えば、明治安田生命が発表する2020年生まれの子どもの名前ランキングで、女の子の1位になった「陽葵」を見ると、「ヒナ」「ハルキ」「ヒナタ」「ヒマリ」「ヒヨリ」など元の漢字とは無関係な読み方をさせるものがある。

女の子の3割が“読めない名前”

『子供の名前が危ない』(ベスト新書)などの著書がある牧野氏によれば、

「読み仮名の記載については、長い間必要性が議論されてきたことですし、利便性向上のためにも必要だと思います。これまで、出生届に読み仮名を記載しても戸籍には読み仮名が記載されておらず、名前の読み方を変えることにも、法律上どんな手続きも必要ありませんでした」

 キラキラネームなど、自由な読み方をさせる多様な名づけが行われてきた背景には、名づけに関する制限が少ないことがあった。

「現行では、常用漢字と人名用漢字を使用するという決まりがあります。その他に、親子で全く同じ名前や、漢字の意味と全く逆の読みをさせる名前については、控えさせるようにという通達があります。しかしながら、役所の窓口では書類の不備が無ければ原則として受理しているのが実情でしょう」

 その上で、牧野氏は「キラキラネームに関するルール作りは難しいのではないか」と指摘する。

「最近の女の子の名前は、元の漢字とは別の読ませ方をする名前が3割程度を占めます。特に多いのが心を『コ』、愛を『ア』、花を『ハ』と読ませる読み方で、漢字を見ただけではまず正確な読みは分からないでしょう。ですが、どの読み方を認めてどれを認めないかという基準を作ることは非常に難しいです。名前に使われる漢字や読み方の組み合わせは無数にあるので、それぞれに個別の決まりを作るのは現実的ではないからです。辞書通りの読み方しか認めないというのは、ある意味手っ取り早いかもしれませんが、それでは最近の名づけの主流からはかけ離れてしまうという懸念があります」(同)

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