「ハコヅメ」最終回 他のヒットドラマより評価されるべき理由は「ヒト」と「カネ」
日本テレビの連続ドラマ「ハコヅメ~たたかう!交番女子~」(水曜午後10時)が、きょう9月15日放送の第9話で終了する。第8話までの世帯視聴率の平均値は2桁を超え、コア視聴率(13歳~49歳)も全ての連ドラの中でトップを取る週が多かった。なぜ、当たったのか。
「ハコヅメ」がどうして当たったのかというと、よく出来たコメディである一方、シリアスなストーリーの部分も見応えがあるからだろう。
原作が元女性警察官の泰三子氏が描いた漫画なのは知られている通り。脚本は根本ノンジ氏(52)が担当した。
根本氏は漫画を脚本化する名手として知られ、これまでにテレビ東京「フルーツ宅配便」(2019年)やフジテレビ「監察医朝顔1、2」(2019年、2020年)などを成功に導いた。原作の持ち味を崩さないまま、面白さを増幅できる人として名高い。
ダブル主演した藤聖子巡査部長役の戸田恵梨香(33)と川合麻依巡査役の永野芽郁(21)の演技も出色。その上、息もピタリと合っている。
2人の関係はペア長(新任警察官の指導員)とペアっ子(指導される新任警察官)だが、やり取りはまるで漫才のツッコミとボケ。藤がツッコミ、川合がボケである。2人はほぼ出ずっぱりなので、笑える場面が散りばめられた。
川合「私もイケメンの彼氏が欲しいですーっ」
藤「その欲望、勤務中に出す声量じゃないでしょ」
川合「ムリですぅー、抑えられません!」(第5話)
公務中の上司と部下の会話とは思えないのだが、不思議と違和感を抱かせず、笑えた。
コメディエンヌの2人
そもそも2人はコメディが得意なのだ。戸田はTBS「俺の家の話」(今年1月期)が記憶に新しく、永野も日本テレビ「親バカ青春白書」(2020年)などに出演してきた。
キャリアが上の戸田のほうがコメディエンヌとしても場数を踏んできた。もっとも、このドラマで弾けているのは永野である。
第6話で源誠二刑事(三浦翔平、33)と一緒にパトカーで管内を巡回した際にはこんなやり取りがあった。
川合「源さん、ホントもう切腹覚悟で言うんですけど…」
源「なにそれ、怖い」
永野「トイレ行きたいんですけど、いいですか」
源「おまえの切腹、カジュアルすぎじゃね。武将か!」
トイレに行きたいだけなのに、川合はこの世の終わりのような表情だった。永野の熱演が光った。
一方で初回から通底しているのが、藤が同期の桜しおり(徳永えり、33)をひき逃げした犯人を追うというシリアスなストーリー。これがドラマの背骨になり、見応えが増した。
単なるコメディでは成功しなかったのではないか。警察ドラマであるからには正義が悪に立ち向かう部分が求められるだろう。
桜をひき逃げした犯人は新任女性警官マニアの「守護天使」という男と見られている。その男が近づいてくることを期待し、藤は川合とペアを組んだ。つまり川合はオトリだった。
だが、川合とペアを組み、接しているうちに藤の考えは変わり、今は川合の身の安全を第一に考えるように。守護天使が現れないことを願っている。この辺の人間ドラマも面白い。
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