ヤクルト「9・13の悲劇」 何がどう転がれば良かったのか? 9回表を「たられば」で振り返る

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“あの時点で審判のチョンボでしょ”の声

 この段階では1アウトのままである。

 プレーは続行され、2塁手は3塁走者・古賀がホームを陥れようとする動きを警戒しつつ、挟殺プレーを進める。1塁手から「2塁を踏め」と言われてベースへ戻りかけたが、なぜかまたボールを1塁手に送ってしまう。

「1塁手の福田は冷静でしたね。再びボールを2塁手・京田に転送し、京田もベースを踏んだので走者・西浦はフォースアウトのはずが、目の前にいた塁審はこれをスルー。アウトのジェスチャーをしなかった。そのため挟殺プレーが続くことになりました。別のチームの選手からも、“あの時点で審判のチョンボでしょ”という指摘は少なくなかったですね」(記者B)

 そうこうするうちに、2塁手が警戒していた3塁走者・古賀がホームへ走り出した。ボールはそこで1塁手から捕手へ渡ってタッチアウト。

 先ほどの2塁でのフォースアウトを2アウト目とすれば、これでゲームセットのはずなのだが、そうはならなかった。2死1、2塁でゲームが続行されようとしたのだ。そこで、与田監督は「走者・西浦は2塁でフォースアウトではないか」とリクエストを要求した。

 審判団は検証の後、「アウト」を宣告し、試合終了。これに納得のいかない高津監督は、猛抗議を続けた──という流れだ。

「高津監督が納得いかないのはムリもないでしょう。2塁の塁審の目の前で2塁手がベースを踏んでいるのにアウトを宣告しなかったのですから。それを見て、3塁走者は本塁に突っ込んでいるわけで、ちゃんとアウトを宣告していればそうはならなかったと主張するのも無理はない」

 と、記者C。高津監督の抗議に対し、審判団の諭し方も無理があったと指摘する声もある。

「最も冷静に見ているべき人物」とは?

 記者Cが続ける。

「与田監督のリクエストが『2塁がフォースアウトではないか』というもので、それを認めるのならその時点、要するに『2アウト1、3塁』でリスタートしても良いのではという主張はあるのかもしれませんね。もちろん、ルールブック上は認められないでしょうし、ヤクルト側の肩を持つならばですが……」

 加えて、「一連のプレーを最も冷静に見ているべき人物」について言及する。

「ヤクルトの3塁コーチはこの場面を客観的に見ることができたはずだし、そうしなければいけない人物でした。挟殺プレーがある間も、挟まれている西浦がアウトになってもまだ2アウトだからと3塁走者・古賀に伝えるべきだったのでは? 一か八かを狙ってホームへ突っ込む態勢を取らせていたのだとしたらお粗末と言われても仕方ありませんね」

 記者A~Cは揃って、「この日のプレーは今季のみならず長く語り継がれることになるでしょう」と言うのだった。

デイリー新潮取材班

2021年9月15日掲載

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