実はコロナで批判されている米国「CDC」の実態 小池都知事肝いり「日本版CDC」は成果ゼロ?
新型コロナウイルス対策の司令塔として
CDCが多くの優秀な人材を抱えていることは間違いないが、「感染症の正確なデータを収集し、学術誌に論文を発表することにばかり熱心で、その本質は巨大な大学だ。緊急事態なのに、平時を前提に運営している」との見方が強い。
日本では、実態とは異なるイメージが先行していた感が強いが、昨年10月東京で、米国のCDCを意識した「日本版CDC」が産声を上げた。
それが「東京iCDC(東京感染症対策センター)」である。都医師会が設置を提言し、昨年7月の都知事選で小池百合子氏が目玉公約に掲げた経緯から、早期実現となった。名称にiが入っているのは感染症(infectious disease)に特化した組織であることを明らかにするためだ。
新型コロナウイルス対策の司令塔として設置された東京iCDCの任務は、市区町村の保健所や都内の医療機関、東京都医師会などと連携してコロナ対策に当たるとともに、感染状況の情報収集や発信、調査・分析を行うことだ。
組織のトップは福祉保健局内の健康危機管理担当局長が就き、同局の感染症対策部職員約80人がiCDCをサポートする。東京都に政策提言をしてもらうために、iCDCには医師ら専門家による「専門家ボード」が付置された。
「小池知事に振り回されて……」
ボードの座長に賀来満夫東北医科薬科大学特任教授が就任し、疫学・公衆衛生チームに西浦博・京都大学教授を始め5人、感染症診療チームに大曲貴夫・国立国際医療研究センター国際感染症センター長を始め4人、検査・診断チームに三鴨廣繁・愛知医科大学教授を始め4人、リスクコミュニケーション・チームに4人、外部アドバイザーに田中耕一氏を始め3人が任命された。
錚々たるメンバーが配置されたにもかかわらず、専門家ボードは開店休業状態のようだ。毎週木曜日にテレビに映し出される小池知事の御前会議は、「新型コロナウイルス感染症モニタリング会議」であってiCDCの専門家ボードではない。
鳴り物入りで誕生したが、1年が経とうとする現在、実質的な成果を挙げていないと言っても過言ではない。都庁OBからは、「小池知事に振り回されて、疲弊するのはいつも都の職員ばかりだ」との嘆き節が聞こえてくる。
東京の状況を見るにつけ、日本でCDCという箱物を急いでつくるのは考えものだが、筆者は「米国CDCが有する人材育成の機能には注目すべきだ」と考えている。
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