実はコロナで批判されている米国「CDC」の実態 小池都知事肝いり「日本版CDC」は成果ゼロ?

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争点の1つは「緊急時対応のあり方」

 立憲民主党の枝野代表は9月7日、次期衆議院選で政権を獲得した場合に速やかに取り組む7項目の重点政策の1つとして、「新型コロナウイルス対策で司令塔となる組織を首相官邸内に設けること」を掲げた。専門家チームのあり方も見直すとしている。

 自民党総裁選に立候補を表明している岸田元政調会長も、「健康危機管理庁」構想を提唱しており、近く行われる衆議院選においても「新興感染症に対する緊急時対応のあり方」が争点の1つになることは間違いない。

 昨年3月に新型コロナウイルスのパンデミックが起きると、「司令塔の不在が新型コロナウイルス対策を後手に回した」とさんざん指摘された。日本では国立感染症研究所を始め、多くの機関が感染症対策をばらばらに実施しており、米国のCDC(疾病予防管理センター)のような1つの組織になっていない。

 CDCの名前はよく知られるようになったが、その実態についての理解はあまり進んでいない。CDCは米国保健福祉省所管の連邦機関で、1946年にマラリア対策の専門機関として設立された。本部はジョージア州アトランタにある。現在の使命は、「米国内外の健康、安全、セキュリティーの脅威から米国を守ること」だ。

「責任回避に終始している」

 CDCは常勤スタッフ約1万4000人を擁する巨大組織で、2020年度予算額は約77億ドル(約8476億円)。このうち約35億ドル(約3848億円)が感染症対策と危機対応関連に当てられている。人員も予算も桁違いなのだ。また、日本では「1つのまとまりのある組織」との印象が強いが、その実態は複数の研究センターの寄り合い所帯に近い。

 CDC本部の緊急オペレーションセンターにはスタッフが常駐し、緊急時には州などの求めに応じて即時に対応できる体制になっている。緊急時対応以外には、検査法や調査法の開発、情報発信、人材育成などの機能を担う。さらにCDCは数多くの研修プログラムを持っており、米国を始め世界の公衆衛生人材の育成にも貢献している。

 意外なことだが、米国では「CDCは新型コロナウイルスの緊急時対応に失敗した」との批判が高まっている(6月11日付WEDGE Infinity)。最前線で格闘する医師や行政責任者からは、「CDCは何もしない。世間からの批判を恐れるあまり責任回避に終始している」との声も上がる。パンデミック初期に提供されたCDC製の検査キットに不備があり、現場を混乱させる原因をつくってしまったこともあった。

 また、CDCが国民に対して直接情報を発信する機会も少ない。大統領の会見に同席する専門家は、もっぱら米国立衛生研究所傘下、アレルギー感染症研究所のファウチ・所長だった。

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