衛星放送の受信料は撤廃……高市早苗議員が語っていたNHKが絶対抵抗する改革の中身
AMラジオ、BSも1波に
高市:さらに昨年は、コロナウイルス感染症の影響で経営が苦しい事業者が増えましたから、ホテルや旅館などテレビの設置台数の多いところの受信料を下げてほしいとお願いをしました。その結果、前田会長は持続化給付金を受けた全ての事業者を対象とするなど、期待以上に踏み込んで下さいました。【2】の営業経費についても、下げる努力をすると言って下さいました。
――営業経緯については、デイリー新潮でも「NHK、受信料7000億円の徴収にかかる経費は780億円! 高市前総務相が指摘したムダ」(20年11月29日配信)として報じている。
高市:【3】の放送波というのが一番難しい話でした。現在、NHKは地上2波(総合、教育)、ラジオ3波(AM第1、AM第2、FM)、衛星4波(BS1、BSプレミアム、BS4K、BS8K)もあるわけですが、こんなにいらないでしょう、と。ラジオは災害時に必要です。遠くまで飛ばせるAMと、近くまでしか飛ばせないけれど音質がよいFM、ひとつずつは残したほうがいい。けれど、AMは2局もいらないので、どちらかをなくす。そして衛星4波は最終的に、1波に減らしてほしいと言ってきました。8Kについては、NHKが中心となって技術開発をしてくれましたが、対応するチューナー等を購入しなければ一般家庭では観ることができません。オリンピック・パラリンピック後は、医療分野など幅広い分野で社会実装すればいいと思います。ラジオとBSの減波についても、前田会長は呑んで下さいました。
――こんなにたくさんチャンネルがあっては物理的に全部を視聴することなど不可能だ。減波はさらに多くの経費削減に結びつくという。
高市:【4】には、新放送センターの建設積立資産(1994億円)も含まれますが、波を減らすということは、番組の数が劇的に減ることになります。となれば、新放送センターのスタジオの数も、放送設備も減らすことができます。さらに番組制作費も人件費も減らすことができるわけです。波を減らすことができれば、新放送センターの建設費、放送設備費など、大きな圧縮が可能です。これについても、前田会長は了解して下さいました。
――さらに、NHKの子会社、関連会社の整理にまで踏み込んでいた。
高市:そして【5】の子会社です。例えば、NHKプロモーションには社員が58人しかいないのに、役員が11人もいるとか、関連会社には社員16人、役員11人なんてところもある。そして、子会社との随意契約率は93・5%(令和元年度)と異常な高さです。子会社改革を強く依頼しました。すると前田会長からは、中間持株会社を設置してはどうかという提案を頂きました。前田会長が過去の事例を自らチェックしたところ、過去の子会社の合併では、給与が高いほうの会社に給与水準を合わせていたそうです。つまり合併により、すごく無駄が出ていたわけです。だから、いっそ中間持株会社を作って、その中で必要なものだけ残すと。
――前田会長とは、話が進んでいたようである。
高市:私から投げかけた提案については、前田会長がNHKに持ち帰り、役員や幹部職員とも話し合ったようですが、かなりの抵抗があったと聞いています。返事が返ってくるまでに1カ月とか1カ月半とか、時間のかかることもあったけれども、基本的に全部、了承して下さいました。
総務省のドリームチーム
――今回の中期経営計画には、それが全部盛り込まれている。
高市:確かに、前田会長が私に約束して下さった項目は全部入っています。しかし、実施する時期が遅すぎます。まず、衛星波。
――中期経営計画にはこうある。〈2023年度中に2Kのうち1波を削減します〉
高市:23年度というのは、23年4月から24年3月までです。前田会長の任期は23年1月で切れます。これで本当にやってくれるのかどうか、誰が責任を取るのかもわからない。そして音声波(ラジオ)、もっと簡単に簡単に削減できると思いますが、実施予定は25年度。受信料の値下げについては23年度。
――〈2025年度に現在の3波(R1・R2・FM)から2波(AM・FM)へ整理・削減する方向で検討を進めます〉〈受信料を2023年度に値下げの方針〉とある。
高市:前田会長が再任されるならよいのですが、それは誰もわからないことです。私は前田会長と何度も話をしているうちに、この方が会長でいる間にしか、NHK改革はできないと思いました。前田会長が放送波を減らすことを呑んで下さった段階で、私はこの方はスゴイと。この方がいる間に総務省も本気で抜本改革を後押ししなければと思い、去年の夏の総務省人事で、情報流通行政局については、課長級まで自ら選びました。本来、大臣が人事をやるのは次官級と局長級と部長級までです。私は長く大臣を務めたので、大体の顔ぶれを知っています。その中には、NHK改革に非常に積極的な人も、それほどでもない人もいらっしゃいます。局長、官房審議官、放送政策課長、総務課長も含めて、情報流通行政局には、NHK改革に懸命に取り組める“ドリームチーム”を作りました。だから、NHKに前田会長がいて、総務省にドリームチームがいる間にもっと踏み込んでほしかったですね。
――一説には、23年度に値下げされる受信料は300円程度とも報じられている。
高市:これまでよりは値下げ幅は大きいかもしれませんが、私が言っているのは衛星付加受信料の撤廃ですからね。本来は、(地上波契約の)月額1225円、年額1万4700円、のみにしてほしかった。衛星波は1波に減らす、他にもコストカットできる部分はいっぱいある。剰余金もたっぷりある。そう考えると、衛星付加受信料は撤廃してほしかった。
――撤廃とは、衛星の受信料を丸々なくすって意味でしょうか?
高市:そうそう、だからアンテナがついてようがついていまいが、地上波の料金にするってこと。今はほとんどの方が、衛星付加受信料の月額2170円、年額2万6040円を払っています。ですから、900円くらいの値下げをもっと早く、来年度、21年度の内にやってほしかった。
――大いにご不満のようだ。
高市:スピード感がない。そして金額の規模、300円って大きいように聞こえるかもしれないけれど、私は衛星付加受信料の撤廃を求めてきたんですから。コンテンツを相当絞り込めばできますし、波を減らすことをきちっと示せば、来年度に着手できるでしょ。それが前田会長の任期切れの後の年度に全部統一されているのが、とても不安です。
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