石倉洋子デジタル監 著書で明かした「ファーストクラスへのアップグレード方法」が不評を買うワケ
赤ちゃんを連れた客
だが、聞き捨てならないのはここからである。話は飛行機に変わる。
〈飛行機の座席など事前に座席指定をしていても、チェックインカウンターで、もっと良い席(前方、座席の前のスペースが広いなど)はないかと聞くと、探してくれることがしばしばあります。もちろん変更できない時もありますが、何も聞かないと何も始まらないので、一応聞いてみる。実際、私は最近ニューヨークを往復したのですが、行き帰りとも良い席に替えてもらうことができました。求めないと何も始まらない、少なくとも自分の希望を伝えることが大事なのです。〉
そして、具体的な成功体験に話へと及んでいく。
〈以前、こんなことがありました。事前に座席を指定していたのですが(ビジネスクラスの一番前の通路側で、私が好きな席)、チェックインをしようとしたところ、航空会社の人に「席を替わっていただけませんか」と聞かれたのです。どこに移るのか聞くと、同じ列の反対側(左ではなく、右側のビジネスクラス一番前の通路側)だったので、「いいですよ」と返事をしました。〉
〈「ところで、なぜ?」と聞いたところ、「赤ちゃんをつれた乗客がいて、あなたが予約していた席の前に、赤ちゃんを寝かす台があるから(反対側にはついていない)」と言われました。〉
石倉氏にとって、こういう「譲り合い」が求められる場面ですら、“チャンス”だったというのだ。
〈「何だ、そういうことか」と思ったのですが、ついでに、「替えるなら、ファーストクラスに替えてくれてもいいのだけど(笑)」と言ってみました。ほんの冗談のつもりだったので、その時は、スタッフと笑っただけで終わり、すっかり忘れていました。しかし、ゲートに行ったら、ファーストクラスの搭乗券が待っていたのです!〉
某大手紙にもいた
航空会社の関係者が呆れて語る。
「どこがセンスの良い主張なのでしょうか……。私たちは、こういう立場のあるお客様からの無茶な要求に頭を抱えるのです。当然、正規の値段をお支払いいただいている他のお客様の手前、特定のお客様に対してだけアップグレードする特別扱いはできません。ただ、実際のところ席に空きがある場合、トラブルを避けて融通を利かせてしまうことが多々あります」
報道関係者にもたまにいるそうで、
「某大手紙の編集委員は、広報に『今度、欧州に出張するんだけれどもCクラス(ビジネスクラスのこと)なんてどうかな』と図々しく言ってきた。彼は当時、航空行政について記事を書いていたので、機嫌を損ねて筆を走らされてはいけないと考え、担当者はエコノミークラスからビジネスクラスへアップグレードしていました」
では、石倉氏の場合はどう判断されるのだろうか。
「政府に顔が効く大学教授だった石倉さんは、航空会社から見て間違いなく“政治銘柄”です。ご本人は『ほんの冗談のつもりだった』なんて語っていますが、現場の接客担当者が慌てて上司に相談し、アップグレードの手配をしたのでしょう」
石倉氏にとっては“センスの良い主張”だったのかもしれない。だが、海外であろうとも一流の人間は、このような相手の窮状に付け入るような無粋な”主張”はしないのではないか。サービスに見合った対価をきちんと払う。それが大人の作法でもあろう。今後は“ごっつぁん体質”を改め、奉仕の精神で仕事に邁進していただきたいものだ。
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