ジャズシンガーが語る“コロナ禍の苦境” 高すぎる補助金申請のハードル 16回目の申請で100万円

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支援や補助金は不十分

 9月6日からは、文化庁の別の補助金の申請が始まった。「コロナ禍を乗り越えるための文化芸術活動の充実支援事業」の2次募集で、感染ガイドラインに沿った公演の実施や、中止になった公演のキャンセル料に対する補助金が最大で2,500万円交付される。

「法人もしくは任意団体であることが応募の条件なので、まず私はジャズプロジェクト実行委員会という任意団体を立ち上げました。団体設立の手続きだけでもかなり大変でしたが、税理士の方に助けてもらいながら、なんとか進めています。今回の補助金は、2021年末までの間に開かれるライブや公演に対して支払われるものなので、コンサートの計画書を作成しなければなりませんでした。無事に開催出来るかどうか不安が残るまま、10公演ほどライブをブッキングしました。他にも感染予防対策徹底の誓約書など、必要な書類を準備し、さらには、まだかなり先の公演にも関わらずフライヤーまで作成しなければいけません」(同)

 五十嵐さんは、アーティスト支援のためのチャリティーTシャツの販売プロジェクトを始めるなど、この難局を前向きに乗り越えようと奮闘している。その上で、支援や補助金のシステムには課題が多いこと指摘する。

「正直なところ、感染症対策の面から言えばどうしてもリスクが残るライブ開催に対する補助だけでは不十分だと思います。いつまたデルタ株のように感染力が強い変異株が出てくるかも分かりませんから、計画を立てても本当に開催出来るのか不安が残りますし、それはお客さんも同じだと思います。事実、今回の緊急事態宣言も当初9月12日までとされていたものが、30日まで延長することが発表されました。もちろん早くライブを開きたいという気持ちはありますが、ライブだけではなく、楽曲の製作やCDの発売に対する補助金があれば、より多くのアーティストが安心して活動を続けられるのではないでしょうか。そもそも、文化庁の補助金申請のハードルがあまりに高いと思います。事実私の周りにも、活動を諦めざるをえなかった人がいますし、残念ながらそういう人はこれからますます増えていくでしょう。コロナが収まった後、以前と同じようにライブを楽しむためには、今こそアーティストに対するきめ細やかな支援が必要だと思います」(同)

デイリー新潮取材班

2021年9月10日掲載

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