SMAPデビューから30年 木村・中居が言及した「8年でスタートライン」の法則
中居にとっての8周年は?
あくまで“アイドル論”として自身についてはあまり言及しなかったが、そもそもデビュー時に、ジャニーズでは恒例のオリコン1位をとれなかったSMAPは、いきなり“山頂”に連れて行ってもらったとも言いづらい。だからこそ、山を登る方法を自分で考えられたことを、しておいてよかった経験として後輩に伝えているのかもしれない。
そして、ひとつ疑問が浮かぶ。この「8年でスタートライン」というのは中居自身の感覚値なのだろうか。
これをデビュー当初から考えていたとしたら、活動期間8年の光GENJIを見て育ったとは思えない、長期プランでの活動を意識していたことになる。
中居にとっての8周年は1999年から2000年にかけてで、曲でいえば「夜空ノムコウ」と「世界に一つだけの花」のあいだ、個人としても既に紅白歌合戦の司会者も務めたあとで、国民的アイドルになっていたと言っていい頃だ。だが、この8年という数字は後輩たちの活躍を見ると、妙に説得力が湧いてくる。
デビューから8年で、わかりやすく新たなスタートラインに立ったと言えるのは、NEWSの加藤シゲアキだ。
「デビューしたら勝ちだと思ってた」という加藤は、デビュー後、それが違うことに気づき、いきなり涙が止まらなくなるほど悩んだ時期もあったという。(*4)
「デビューのご贔屓というか、最初だけ目立たせてもらえるけど、これ続かないな、って。一生人気がつづくわけじゃないから、全員武器があったり、目立ってないと、すぐ終わるぞって」と危機感を持ったというが、武器という表現はもちろん、“最初は目立たせてもらえる”という加藤の言葉は、中居の言う“頂上に連れてってもらえる”と共通するものがある。
「全員が何か持ってないと流行りは終わる」と危機意識を感じていた加藤が“何か”を見つけたのはまさにデビューから8周年のとき。2012年に『ピンクとグレー』(角川書店)で小説家デビューを果たす。その後も執筆を続け、昨年発売された『オルタネート』(新潮社)は直木賞候補にも選ばれるなど、自分で見つけた道を今も突き進んでいる。
大野智、河合郁人、伊野尾慧らの「活動」
さらに言えば、嵐の大野智がアート展を開催し、初めての作品集を出版したのも8周年のときだ。A.B.C-Zの河合郁人がモノマネ番組で準優勝し、一気にテレビ露出を増やしたのも8周年、「デビューしてから7年半くらいほとんど個人の仕事がなくて」(*5)と自分でも振り返るHey! Say! JUMPの伊野尾慧が「めざましテレビ」「メレンゲの気持ち」でレギュラーになるなど、一気にお茶の間に進出したのも8周年の年だ。
これらは、単に、デビュー直後に爆発したわけではない彼らが、ブレイクするまでにデビューから8年かかったのだ――という話でもない。
デビューと共に数々の記録を打ち立てたKinKi Kidsの堂本剛が、自らアートワークや宣伝方法の会議にも出席して始動させ、現在まで続くソロプロジェクトの起点となった「ENDLICHERI☆ENDLICHERI」も8周年のときだった。
「音楽に救われている」という趣旨の発言を繰り返していることを考えると、8年というのは堂本剛が自分の道を見つけるまでに必要な時間だったとも言い換えられる。
年代もデビュー時期も違う多くのジャニーズアイドルがCDデビュー8周年記念日から9周年記念日までの間に、いわゆるジャニーズアイドル的ではない何かを見つけ、形にしている。
もしかしたら、8年というのはアイドルがアイドルであるだけは生きていけなくなる時間なのではないだろうか。元の意味に立ち返って言い変えれば、“アイドルという偶像”が“タレントという才能”に変わるのに必要な期間なのかもしれない。
少なくとも、彼らはアイドルとしてただ受動的に消費されるのではなく、自分の才能を届ける道筋を自分で作った人たちであるとも言える。
そしてそれが中居の言う“芸能界でのスタートライン”の意味するところなのかもしれない。
そう考えると、木村拓哉の“同期”発言も、ジョークではなく、自らで自らのスタートラインを引き直そうとする“強い決意”のようにも聞こえてくるのである。
【引用注】
(*1)TOKYOFM『木村拓哉 Flow supported by GYAO!』2021年7月4日放送
(*2)TBS『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』2021年9月3日放送
(*3)TBS『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』2021年8月13日放送
(*4)TBS『NEWSの全力!!メイキング』2021年9月4日放送
(*5)『TVガイドPERSON』vol.54
カッコ内は筆者による補足。
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