サウナ、ジム、デパ地下…エアロゾル感染が危険な場所は? 子どもは2学期学校に行かせるべきではない?
「自宅療養者」「家族」が直面する難問
ワクチンを打っても感染対策をとっても、自ら、あるいは家族が感染したら……。一家はさまざまな難問に直面する。
「家族に感染者が出ると、本当に先が長いですよ」
と語るのは、都内・30代の男性会社員である。
彼は同じく都内で勤務する妻と、4歳の息子、2歳の娘の4人暮らし。この8月半ば、娘が保育園経由で感染。残りの家族3人も濃厚接触者となり、一家で隔離生活を送っている。
「私を含めた3人はPCR検査を受けて陰性。娘も程なく症状が治まりましたが、9月初旬まで一家で自宅待機が続くのです」
感染者が出た場合、家族はほとんどのケースで濃厚接触者に認定される。現状、感染者は発症日から10日間かつ症状軽快日から3日間、濃厚接触者は最後に感染者に接触した日から14日間は自宅待機することになるが、実際はこの男性のように、2週間の我慢では済まないらしい。
Q.濃厚接触者は最大何日、「自宅待機」をしなければならないのか?
「保健所によれば、家族が陽性か陰性かで期間が異なるそうです。陰性の場合は、娘の10日間の自宅待機が明けてから更に14日間が待機期間となるそうです。なぜかというと、発症から10日間はまだ娘が『感染者』であり、最後に接してから14日間は待機しなければいけない、という理屈になるんですね。だから、娘が発症してから数えると10日+14日=24日間も待機を強いられるということになるんです」
他方、仮に家族が陽性だった場合、その人は、
「感染者なので、症状が治まれば判明から10日間で済む。つまり、感染しない方が社会復帰まで時間がかかるんですね。何だか釈然としませんが……」
この間に家族に新たな感染が発覚したりすれば、またその感染者の隔離期間が明ける10日後から数えて更に2週間は待機しなくてはならなくなる。そうなれば籠城は優にひと月を超えるのだ。
この男性は、娘が陽性とわかって3日程経った後、東京都から支援物資が届いたという。しかし、
「ミネラルウォーター6本、乾麺やレトルトカレー、パスタなどでした。ありがたいですが、レトルトばかりでは飽きるし、栄養不足。買い出しに行かざるをえませんでした。娘が感染したことを知る知り合いに会うとまずいので、人目を忍び、短時間にしましたけど」
自宅療養者やその家族で同じようなケースは多々あると思われるが、
Q.食料、備蓄品が尽きたら買い物に出ていい?
「感染者はもちろん、濃厚接触者も、外出は基本的に控えてほしいですね」
とは、前出・角田副会長。
「食料が尽きた場合は、知り合いに頼み、調達してドアノブにかけておいてもらったり、宅配サービスを頼むのがいいです。ただ、それも難しい場合はマスクをして、手指を消毒し、近くのコンビニなどへさっと短時間行くのもやむをえないでしょう」
寺嶋教授が続けるには、
「その場合も、不織布マスクを鼻まで着用し、早朝など人の少ない時間帯を選んでいただきたいですね。店に長居しないように、事前に必要なものをリストアップし、短時間が望ましい」
では簡単な運動はどうか。とりわけ無症状・軽症の感染者や、元気な濃厚接触者にとっては、体調を維持するためにも、必要なことと思えるが。
先の会社員氏も、
「ストレス解消をかねて、陰性の上の子を連れて少しサイクリングでもできればと思っています」
と言うが、
Q.運動で外出は許される?
矢野医師は言う。
「感染者については、うつす危険性があるので、無症状や症状が軽くて安定している場合も含め、外出はお勧めできません。とはいえ、感染すると血栓ができやすいですから、あまりにもじっとし過ぎていると、いわゆるエコノミークラス症候群になりかねない。そこで、家の中を歩き回ったり、家の中に階段があれば上り下りをする、あるいは軽い筋トレといった運動は行ってほしい」
また、
「脱水にならないように、水をとにかくしっかりと飲んでほしいですね」(同)
他方、濃厚接触者はどうか。
「きちんとマスクをしていれば、多少、外に出て散歩などをするのは、問題ないと思います」(宮坂氏)
メンタルが参ってしまっては元も子もない。
ハッピー・ハイポキシア
目下、感染者が出た家庭にとって、一番の不安は、病状が悪化した時にどうなるか、ということだ。重症化の兆候は早めに掴みたい。
Q.どの持病が危ない? 基礎疾患別死亡率
参考になるのが、厚労省が運用する「HER―SYS(ハーシス)」と呼ばれるシステムである。昨年5月以来、既往歴など感染者のさまざまな情報を入力、管理し、医療機関や保健所などで共有している。8月25日、そのうち4~6月に登録された32万人のデータの中で、重症化リスクとされる九つの要因を持っていた10万人について、死亡率が発表された。
それによれば、最も率が高かったのは、14%が死亡していた慢性腎臓病。7人に1人が死亡していたことになる。次いで、慢性閉塞性肺疾患、がん、免疫抑制、糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満、喫煙と続く。
矢野医師によれば、
「自分の臨床経験からしてみても、やはり腎臓病の人は重症化しやすいと思います。特に透析患者のリスクが高い。早くワクチンを打ってほしいですね」
生活習慣病を持つ方のリスクの高さは一目瞭然。
こうした疾患を持つ向きはもちろんのこと、そうでない感染者も含め、重症化の兆候をどう掴むべきか。
パルスオキシメーターを手元に置き、血中酸素飽和度のチェックをする方法が広く知られている。93を切れば重症化のサインといわれるが、
Q.酸素飽和度以外の兆候はあるか?
後藤医師が言う。
「血圧と脈ですね。普段正常血圧の人が、(上の)血圧100mmHgを切り、脈が100/分を超えると危ない」
寺嶋教授が補足するには、
「そうなる前に、日常動作の後にいつもより息苦しかったり、脈拍や呼吸が普段より上昇していないかを常にチェックしてください」
また、厄介なことに、最近は以下のようなケースもあるという。
後藤医師によれば、
「私が注意して見ているのは、『ハッピー・ハイポキシア』、『幸せな低酸素血症』です。これは、血中酸素飽和度が危険な状態になっているにもかかわらず、息苦しさなどの自覚症状が出ないという症例。そのため、自分を無症状や軽症だと思い込み、救急車を呼ばないなど、必要な治療を受けないケースが最近増えているのです。なぜこうしたことが起こるのか、詳しいことはまだわかりませんが、脳の酸素濃度を察知する部分にコロナが何らかの影響を与えるのでは、ともいわれています。寝ている間に本人が気づかないまま亡くなることもあるので、変化に気をつけなければいけません」
まだまだこのウイルスには未解明な部分があるのだ。
終わりに、
Q.「入院難民」が病院にたどり着ける術はあるか?
昨今の病床の逼迫状況からして、重症化したからといっても、入院ができるとは限らない。救急車を呼んでも、病院に受け入れてもらえず、自宅で急死するケースがよく報じられている。
病院で見てもらえるための裏技はないのか。
「それはなかなかない」
と寺嶋教授。
「救急車がダメとはいえ、病院にいきなり行っても受け入れてもらえないでしょうし、他の患者さんにうつす可能性がある。保健所に報告し、指示を待つしかないでしょう」
角田副会長も言う。
「保健所やかかりつけ医に折に触れて相談し、対処を待つのがベストです」
政府が頼りないから、今こそ求められる自己防衛。何より、正しい知識を身に付けることこそが最高のサバイバル術であることは言うまでもない。
[4/4ページ]