サウナ、ジム、デパ地下…エアロゾル感染が危険な場所は? 子どもは2学期学校に行かせるべきではない?
CO2センサーの有無
ここで改めて基本のおさらいをしておこう。人間は日々、体内に物質を入れては排出しているが、
Q.「おしっこ」「大便」「嘔吐」「鼻水」「汗」……感染源となるのは?
寺嶋教授は言う。
「最もウイルスが多く含まれていると言われているのは“顔周りの液”、つまり、唾液や鼻水です。これらには細心の注意が必要です」
ここまではご存じの向きも多いだろうけれど、では、嘔吐の吐瀉物や下痢に、ウイルスは含まれているのだろうか。
東京都医師会の角田徹副会長が言う。
「嘔吐は当然、唾液が混じっていますので危険ですよね。下痢も危ない。消化管の粘膜でウイルスが増殖している可能性もあるので、十分に注意が必要です」
宮坂氏が言葉を継ぐ。
「ですから、公衆トイレなどはとりわけ注意が必要です。無症状感染者で下痢の人などが蓋を閉めずに流してしまった時などは、ウイルスが密閉された空気中に飛び散ってしまい、その後使用した人にエアロゾル感染してしまう恐れがあります」
用を足すのはなるべく家で済ませた方がよさそうだ。
他方、小便にもウイルスは含まれるのか。
「気にしないで大丈夫でしょう」(角田副会長)
汗はどうか。
「含まれていません」(矢野医師)
であれば、ジムに通っても大丈夫という気もするけれど、
「汗からうつることはありませんが、マスクを外して運動している人もいるのがネック。また、やはり更衣室が気になりますね。十分注意が必要です」(同)
外でのランニングなどに切り替えるのも手かもしれない。
以上の論理で言えば、やはり今は、“顔周り”が露出する会食はなるべく控えた方が無難ということになるのだろうが、とはいえ、世の全てが隠遁生活を行えば社会は崩壊してしまう。真っ当な社会生活を営んでいれば、昼夜を問わず、やむをえず、誰かと食事の席を共にする必要は出てくるであろう。その場合、
Q.リスク減「飲食店」の選び方は?
「空気が通るように、複数個所を開けて換気をしているか。また、席と席の間に、しっかりとした高さのあるアクリル板があるか。この辺りがポイントになると思います」(寺嶋教授)
ちなみに入口に設置してあることもある次亜塩素酸噴霧器は、効果が薄いという。
後藤医師はこう指摘する。
「行く場合は、密を避けるために、予約制を取っているなど、店内の人数が絞られている店を選ぶのがいいと思います」
その場合、個室を取るべきか。
「個室がいいでしょう。客の多い大部屋との距離が保てますから」(矢野医師)
いずれにせよ、
「気を付けるべきは、横向きに座るなど、真正面では話さないことです。正面になる場合は、アクリル板は必須です」(角田副会長)
また、宮坂氏は、こんな知恵を紹介する。
「CO2センサーが設置してある店は、換気に気を付けているといえるでしょう。室内の通風換気状態は目に見えませんが、これでCO2濃度を測る。700ppm以上になったら窓を開けるなど、換気すべきタイミングがわかるのです」
ワクチン接種を待たずとも、行うべきことはたくさんありそうである。
子どもの「2学期問題」
Q.子どもを学校に行かせないほうがいい?
「子どもの感染は増えていますが、依然10歳以下では家庭内感染が8割。10代までは重症化率も低く、義務教育上の学校生活の大切さを考えると、休むメリットは小さいと思います」
こう説くのは寺嶋教授。また、宮坂氏は、
「子どもが学校からウイルスをもらってくるから危ないのではなく、親がワクチンを接種して、子どもが持ち帰っても大丈夫な状態にしておくべきだと思う」
という意見。感染対策は親が責任を負い、子どもに負荷をかけるべきではない。加えて角田副会長の話を。
「大人1人が1人にうつす再生産率が2・0~3・0なのに対して、子どもは0・7程度。子どもは他人にはさほどうつしません」
Q.子どもになにを気を付けさせる?
「マスク着用や手洗い、距離をとるなどの基本を徹底させましょう。特に休み時間は、先生の目が行き届きにくく、密になりやすいので、注意が必要だと説明しましょう」(寺嶋教授)
加えて、臨床心理士、スクールカウンセラーでもある明星大学の藤井靖准教授の話にも耳を傾けたい。
「コロナへの感染を恐れる子どもは、ほとんどが親の影響です。親に“絶対にマスクを外すな”と言われて、そのまま運動をして熱中症になってしまった子どももいます。肝心なのは原則と例外を教えること。ある程度の年齢なら、しっかり伝えれば、運動時や一人での下校時はマスクをしなくてもいい、といった自己判断ができるはずです。衛生観念は各々異なることも教えたほうがいい。そうでないと“〇〇ちゃんは誘っても全然来ない”などと蔑視(べっし)につながりかねません。精神的に厳しければ“休んでもいいんだよ”という選択肢も示してあげてほしい」
Q.子どもの自殺者が増えているというが?
厚労省によると、昨年の小中高生の自殺者数は過去最多の499人。今年は6月までの上半期で、昨年同期をさらに上回っている。福岡大学病院精神神経科の衞藤暢明医師が説明する。
「自殺につながる問題は学校2に対し8の割合で、家庭で起きています。コロナ禍で休校になると、いままで診察に来なかったような子が、家庭の問題を抱えて来ることが増えました。家にいる時間が両親も子どもも多くなり、警察や児童相談所が介入するような虐待も、目を見張るほど増えました。コロナ禍で家庭の問題が顕在化したといえます。また家庭の問題は、不和や虐待、アルコール中毒やDVなどの暗部を両親が隠そうとするため、解決が遅れやすい。家庭に要介護者や発達障害の子どもがいる場合も、そうでない子に注意が回らなくなりがちで、親の手が回らない子どもが自殺念慮を抱いたり、自傷したりする場合は、かなり多いのです」
特殊な例と思うなかれ。
「社会の変化のストレスを、一番強く受けるのが若年層です。コロナ禍の長期化が、子どもの生活に影響を及ぼしている範囲はとても大きく、友だちに会えず外に出ないことでうつになったり、学校で教師に頼る機会が減ったりし、自殺のリスク因子が大きくなっている。また、大人のリモートワークと子どものリモート学習は、一緒ではありません。学校ではルールのなかで生活し、ケンカをしたり、友だちを作ったり、大人に反抗したり、さまざまな経験をする。集団のなかで生きる訓練の場なので、リモート学習で勉強は大丈夫、で済む話ではないと思います」
子どもに「変化」を押しつけないために、親の工夫が問われるようだ。
Q.IQや学力の低下にどう対処する?
米ブラウン大の研究結果では、コロナ前に生まれた幼児のIQの平均が100前後だったのに対し、コロナ後に生まれた世代は78だったというのだが――。
「パンデミック時に子どものIQが低くなるのは、あり得ることです。IQは乳幼児期にかなり変動し、個人差が激しい。親の教育や、保育園に行っているかどうかなどでかなり変わり、読み聞かせをしたり、習い事をさせたりしている親の子どもは発達が早い。コロナで接触が少なくなれば、乳幼児のIQが一時的に下がる可能性はあります」
藤井准教授はそう言いつつも、こう続ける。
「永続的に低いままではなく、コロナ禍が終わったり、小学校に入学したりすれば、差が縮まっていく。いま学べていないものを、遅れて学ぶというだけです」
親が神経質になりすぎないことだろう。
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