サウナ、ジム、デパ地下…エアロゾル感染が危険な場所は? 子どもは2学期学校に行かせるべきではない?
どうするワクチン
Q.異物混入「モデルナ」は本当に大丈夫か?
スペインで製造されたモデルナ製のワクチンに異物が混入していたという報道に、不安を覚えた向きもあろう。しかも、当該のワクチンを接種した30代男性が2人、死亡したと報じられたが、危険はないのか。寺嶋教授が言う。
「どのような異物が混入したのか、混入の原因や死亡に至った経緯を調査すべきです。一方、通常はワクチンが入っている容器(バイアル)のなかに、異常がないかチェックしてから打ちますし、ワクチンの注射針は0・25ミリと非常に細いので、異物が体内に入る可能性は低いと思います」
ゴム片が混入したという報道もあったが、
「バイアルにはゴムの部分があるので、そこが注射針で刺激され、容器に入ってしまうことは、ほかの薬品やワクチンでも、おそらく起こりうることです」
矢野医師も、
「知人が打ったのも当該のモデルナ製だと思いますが、心配していません。混入していた異物が金属片だったとしても、筋肉注射なので、周りが線維化して問題なくなると思います」
ワクチン接種を妨げるものではないという。
Q.「モデルナ」2回目が打てない「難民」はいつまでに打てばいい?
期間がかぎられた職域接種を、急な体調不良などでキャンセルした人が、あらためて予約しづらいという問題が表面化している。しかし、寺嶋教授は、
「あきらめずに2回目を打ってください」
と訴え、こう続ける。
「1回目の接種後2カ月経過すると、1回目の接種による抗体は減ってくる可能性があります。しかし、たとえば3カ月ほど空けて2回目を打った場合、2回目の効果は、決められた通りに打ったのとほぼ同じである可能性が高い」
矢野医師はこう言う。
「2回目が打てなければ、4週先、8週先になっても構いません。1年も先になると、2回目の効果は薄れますが、ある程度先延ばししても問題ありません」
Q.3カ月で抗体4分の1でも「ファイザー」に効果はある?
接種後3カ月で抗体がそれだけ減った、と発表されたが、埼玉医科大学の松井政則准教授によれば、
「研究により差はありますが、時間が経てば抗体は減っていきます。それはファイザーやモデルナのワクチンが悪いのではなく、抗体とはそういうもの。そもそも、もとの抗体値が高いので、4分の1に減ってもかなりの抗体量。ウイルスに自然感染した人が得る抗体量より多いといいます」
矢野医師が補う。
「効果が4分の1になるという話ではありません。先日、米CDC(疾病予防管理センター)がファイザー製、モデルナ製で免疫がどれくらい持続するか発表しました。それによると、両方とも6カ月は、重症化を防げるレベルで抗体が有効だということです」
Q.接種開始「アストラゼネカ」の長所と短所は?
「アストラゼネカ製は、アデノウイルスに新型コロナのスパイクたんぱく質を人工的に加え、体内に入れるウイルスベクターワクチン。従来株に対する発症予防効果は、ファイザーやモデルナの95%に対し、76%ですが、これでもワクチンとしてはかなり優秀です」
と、松井准教授。愛知医科大学の後藤礼司医師が補足するには、
「重症化予防もファイザー製やモデルナ製に劣りますが、効果はある。これら2社のワクチンにアレルギーが出る人も、アストラゼネカ製であれば打てます」
さらに寺嶋教授が言う。
「保管温度が2~8度と、一般的なクリニックの冷蔵庫で保管できるので、扱いやすい。また、2回目の接種までの間隔が8~12週と長いことも、副反応のことなどを考えると、人によっては長所になるはず」
再び松井准教授の話。
「若い人、特に女性は血栓症になることがありますが、日本での接種は40歳以上という制限を設けているので、それほど心配はいらないでしょう」
Q.高齢者のブレークスルー感染増加でも、ワクチンに効果はある?
「臨床試験でもワクチンの予防効果は100%ではなく、接種していても入院してしまう例もあります。ただしデルタ株では、データをとった国にもよりますが、たとえ感染したとしても発症予防が約7割、入院予防が約9割と、高い効果が保たれています」
と、寺嶋教授。つまり重症化する恐れは、著しく減少するのだ。松井准教授が補って言う。
「米CDCのデータによると、ワクチン接種者がコロナに感染して死亡する確率は、0・001%未満だといいます」
Q.ワクチン接種3回目は必要か?
「6カ月で抗体価が低下するともいわれるので、3回目も打ったほうがいいでしょう。私は医療従事者として4月に打ったので、年末から年始にかけ、もう1回打つと思います。それにメッセンジャーRNAワクチンは、多少仕組みを変えるだけで、変異株にも対応できる可能性が示されており、デルタ株対応のワクチンができれば、そちらを打つかもしれません」
こう訴えるのは後藤医師。
矢野医師も、強く説く。
「2回目を打っただけでも、想像以上に体内の抗体が増えることがわかっています。3回目を打てば、またかなり増えると思うので、絶対に打ったほうがいい」
厚労省に尋ねると、まだ接種の予定が立っていないと回答するが、政府はすでに、3回目の接種分は確保したという。
Q.「2回接種」同士ならマスクなし会食もOK?
矢野医師が答える。
「複数人で集まり、そこに一人でもワクチン未接種者がいれば、会食等はやめてほしい。ワクチンを打っていても、ブレークスルー感染をしながら無症状という人もいて、気づかずにうつしてしまう可能性があります。米CDCは、ワクチンを接種し終えた人だけなら、かつてのように集まっても構わない、と発表していますが、日本はワクチン接種がある程度進む11月ごろまで、いまのままの感染対策をしてほしいです」
Q.妊婦は臨月であっても接種したほうがいい?
「妊婦の方は臨月でも打ったほうがいい。メッセンジャーRNAの成分は3時間で消え、胎児に影響がないことがわかっており、私の友人にも臨月で打った人がいます。コロナに感染して出産すると、通常の出産にくらべて死産の確率が高くなることも示されているので、周囲に妊婦がいる方は積極的に勧めてあげてください」(後藤医師)
「千倍ウイルス」の防護術
前項で述べたように、予防にはまずワクチン。しかし、これも述べたように、国民全体の接種が7~8割まで進むには、まだ数カ月の時間がかかる。他方、従来株と比べてウイルス量が約千倍と言われる「デルタ株」が猛威を振るうのは、まさに今――。
であれば、当面の課題は可能な限り、ウイルスの魔の手を避けること。そのためにまず押さえておきたいのは、現在の感染経路についてである。
従来、コロナの感染には、飛沫感染と接触感染の二つの経路があるといわれてきたが、8月下旬には、感染症の専門家や医師らが「空気感染が主たる経路」とする提言書を発表して話題になった。
Q.本当に「空気感染」しているのか?
「ほとんどが飛沫によるものとわかっています」
とは、大阪大学免疫学フロンティア研究センター招へい教授の宮坂昌之氏である。
「しかし、その中でも、いわゆる大きな飛沫より、微細な飛沫である『エアロゾル』を通じてのものが問題。エアロゾルは極めて細かく、軽いですから、空中に漂いますし、2メートル以上も飛びます。厳密には空気感染とは、おたふくかぜのように飛沫が完全に乾いていても感染が広まる状態を指しますが、エアロゾルも一定時間漂い、長い距離を飛びますので、空気感染とよく似ています」
そして、
「これを防ぐためには、マスクと換気。とにかくこの二つが重要です」(同)
そうした新しい“常識”を押さえた上で、日常的に訪れやすい、
Q.「デパ地下」「ジム」「サウナ」「銭湯」「プール」……エアロゾルが危険な場所は?
政府の分科会は、クラスターが相次いだ「デパ地下」を槍玉にあげていたが、
「やはり、窓を介しての換気が無理な場所ですから、危険度が高いでしょう」
とは宮坂氏。
前出の後藤医師も言う。
「地下は換気が悪く、そもそも、デパ地下は、いろいろな生鮮食品があって、品定めをしながら見て回るところですよね。当然、滞在時間も長くなってしまいます」
行くなら事前に買う物を決め、感染対策をしっかり取ってということか。
では、屋内プール、サウナや銭湯はどうか。
「これらの場所でクラスターの発生は報告されていません」
と言うのは、寺嶋教授。
「これは湿度の関係かと思います。一般的にウイルスは、乾燥している方が広がりやすい。冬場に加湿器を付けて風邪などを防ぐのはそのためです」
ただ、として言う。
「こうした場所で心配なのは、むしろ更衣室。特性上、窓を開けるのは難しいですし、狭くてどうしても密になりがちですよね」
矢野医師も言う。
「プールやサウナ、風呂については、水に落ちたウイルスは薄まりますし、流されてしまうので、そこから感染することはないでしょう。しかし、問題は更衣室。換気も十分にできませんし、密になりがちです」
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