「IR汚職」“無罪請負人”でも覆せず秋元被告に実刑判決 出馬に意欲示すも「当選見込みなし」
“無罪請負人”でもやはり難しかったか。9月7日、東京地裁は、IR(カジノを含む統合型リゾート)汚職事件で収賄と証人買収の罪に問われていた元自民党所属の衆院議員・秋元司被告(49)に懲役4年の実刑判決を言い渡した。先に贈賄側と証人買収事件の実行役の全員に有罪判決が下る絶体絶命の状況下でも、頑なに無罪を主張し続けてきた秋元被告。予告通り、本当に選挙に出るつもりなのか――。
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【写真】秋元被告から依頼され、証人買収に動いた罪で有罪判決を受けた男と手越裕也とのツーショット写真
「300万円」の授受だけは強く否定
「なぜだか分からないが、本人は無罪にすごく自信を持っていた。300万円を渡されたという時間帯に、議員会館に絶対に行っていない、決定的な証拠があると言うんです」
こう語るのは永田町の関係者である。
秋元被告には、4回にわたって約760万円の賄賂を受け取った容疑がかけられていた。17年9月、IR参入を目指していた中国企業が沖縄県那覇市で開いたシンポジウムで、講演料の名目として振り込まれた200万円。同年同月、中国企業顧問から議員会館で手渡されたとされる300万円。同年12月、マカオ旅行に招待された際の、旅費や宿泊代、カジノで遊ぶチップなど計182万円の利益供与。翌18年2月、札幌市の観光会社を通じて北海道留寿都村に家族で旅行に招待された際の、旅費や宿泊代金など76万円相当の利益供与。以上の4 件である。
そのなかで唯一、受け取っていないと自信を持って訴え続けてきたのが、議員会館で手渡されたという300万円だった。公判を傍聴し続けてきた記者が語る。
「逆に言えば、そのほかの容疑については振り込み記録などの証拠が残っており、言い逃れができない状況だったのです。それらについても、『便宜を図ってほしいという趣旨だとは思っていなかった』『秘書が支払っていたと思っていた』などと苦しい弁明を続けてきました」
切り札の「スマホアプリ」
弁護士を2度変えた秋元被告が、最後に頼ったのは“カミソリ”の異名を持つ弘中惇一郎氏。弘中氏といえば、かつては厚生労働省文書偽造事件で元局長、村木厚子氏の無罪判決を勝ち取るなど“無罪請負人”ともてはやされた名物弁護士として知られる。だが、2年前、弁護した日産自動車のカルロス・ゴーン被告の海外逃亡を許してからは、一転、評価を落とした。そんな弘中氏が300万円の授受を否定する切り札として持ち出したのが、「スマホアプリ」だった。
「歩数などを記録したスマホの『ヘルスケアアプリ』です。現金の授受があったとされる午後1時40分頃からしばらく歩いていた記録が残っていない、つまり議員会館には行っていないと主張したのです。ただし、弱い切り札でしたね。アプリがその時間帯、ちゃんと作動していなかった可能性は十分考えられます。判決では『作動原理・条件、正確性の程度が不明』などとして証拠能力は認められなかった。一方、贈賄側二人の証言は信用できるとして、300万円の授受は事実認定されました」(同)
証人買収についても、秋元被告が主導したと認定。裁判長は「公人としての倫理観はおろかこの種の犯罪に関する最低限の順法精神すら欠如している」と厳しく指弾した。
「そもそも、授受がなかったというならば、こんなことする必要がないのです。弁護側の主張はことごとく退けられました。結局、弘中氏が頑張ったところと言えば、6回目の請求でようやく認められた今年6月の保釈くらいでしたね」(同)
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