菅総理に引導を渡した意外な人物 自民党重鎮は「総裁選ではますます派閥の力が強くなる」と断言する根拠
菅総理が退陣を表明した。
安倍麻生が三行半を突きつけたとか、ぶら下がりの記者をもドン引きさせるほど泣いてみせた小泉進次郎が実は勇退を迫っていたとか、あちこちでいろいろな憶測が飛び交っている。
しかし、私はさる情報筋から、菅総理に引導を渡した本当の人物の情報を得た。
菅総理夫人だ。
そもそも国会議員の夫人というのは、不在がちな夫に代わって地元で活動するので、夫に対する市井の反応を誰よりもリアルに感じ取る。総理夫人ともなれば、推して知るべし。横浜市長選後には特に厳しい反応を感じたことだろう。
そんな中、打つ手が全て裏目に出て求心力が低下し、ぼろぼろになる夫の様子を見た夫人は、とうとう辞職を進言した。これによって、菅総理の心が一夜にしてポッキリ折れた。私はそう聞いている。
衆議院の解散権を封じられて退陣せざるをえなかったとも言われているが、菅総理が本当に強い気持ちを持ち続けていれば、解散総選挙は決して不可能ではなかった。私がそう思う背景には、海部政権末期のこのような証言がある。
1991年ある秋の日、当時の最高実力者である金丸信は自宅で麻雀を打っていた。ともに卓を囲んでいた一人が、4回生議員だった野中広務。金丸はいつも、麻雀を打ちながら横に置いた電話で議員や役人に指示を飛ばすのだが、その日は時の総理・海部俊樹からの電話を受けていた。すると、金丸は突如、怒気を含んだ声で相手に向かって言った。「なら、あんたの好きにせい」。
その様子を目の当たりにした野中は、海部が衆議院解散を伝達して金丸が応じたと悟り、すぐさま側近に選挙準備を指示した。
しかし、結末はそうでなかった。
海部は、金丸の突き放した物言いに、解散を反対されたと思い込んで尻込みした。
そこで、解散ではなく、総辞職の道を選んだ。
あの時、海部が金丸に電話をかけず、自らの判断で解散総選挙に打って出ていたら、その後の日本の歴史は全く異なった歩みとなっていただろう。
ここで肝心なのは、金丸がなぜ、明確な反対をせず「好きにせい」と発言したかである。
金丸は知っていたのだ。たとえドンと称される自分であろうと、総理大臣の権力を押しとどめることはできないと。要は、総理大臣の気持ち一つなのだ。
だからこそ今回の菅も、解散総選挙こそいま必要なのだと強く信じることができれば、実行出来た。そうならなかったのは、菅が自分自身への信頼を無くしていたからに違いない。そこにきて夫人からの引導となれば、もはや「背中を押してもらった」という状況だったのではないかと推測する。
話は、今後の総選挙へと移る。
「菅さんと二階さんが辞めれば、負ける理由はないんだよ。」
ある自民党重鎮は菅が辞任表明した日、こう断言した。総裁選のことではない。その次に行われるより大事な選挙・衆議院総選挙の話しだ。
現に、菅退陣表明直後の世論調査で、自民党への支持率は5.6ポイント上昇し38.0%となった。(TBS調査)支持なしと答えた人が5.7ポイント下がっているので、無党派層の支持を自民が根こそぎ持って行った感じだ。もともと低い立民への支持は、ほとんど動いていない。
総選挙で自民が単独過半数を確保する目処が立てば、その前に行われる総裁選では自民党内の派閥の力がますます強くなるとも、その重鎮は指摘した。
理由はこうだ。現職議員が再選したとしても、もし総裁選で負け馬に乗っていた場合、党内非主流派となる。それはすなわち、今後の人事での冷遇につながる。であれば、何としても勝ち馬に乗るべきで、今は派閥の言うことを素直に聞いておこう……となる。もちろん、新総裁は目新しさから国民人気も一時的には高くなる。その新総裁に自分の選挙区に応援演説に来てもらいたい。注目され、可愛がられることで、重要選挙区として選挙対策のカネを重点的に配分してもらいたい!
こうなると、派閥として一致団結することが一にも二にも大切なのだ。政治において派閥がなくなることはないが、だからといって国会議員の己の利益、しかも目先の利益のために派閥が使われる現実にはげんなりする。
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