松山英樹、プレーオフ最終戦30人中26位でも8年連続出場は「とんでもなくすごい」

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 米男子ツアーのプレーオフ・シリーズ最終戦、ツアー選手権に松山英樹が8年連続で出場し、30人中26位タイになった。

 それを聞いて「30人中26位タイなら下位だな」とがっかりする方がいるかもしれない。だが、この大会は、たとえ30人中30位で終わったとしても、実は出場できたこと自体が「すごい」のだ。ましてや、8年連続出場は「とんでもなくすごい」。だが残念ながら、そのすごさは日本ではあまり認識されていないようだ。

ランキング上位30名のみ

 松山自身、ツアー選手権の開幕前に、こんなふうに語っていた。

「(8年連続出場は)自分が思っている以上に、周りが評価してほしいなあとは思います」(GDO)

 聞く人によっては少々傲慢な発言に思えるかもしれないが、松山の真意は「僕のことをもっと評価してほしい」ではなく、「ツアー選手権に出る大変さ、門戸の狭さを、もっと知ってほしい」ということだろう。

 そう、日本が誇るマスターズ覇者の松山がせっかく「とんでもなくすごい」ことをしているのだから、それを是非ともみなさんにもっと知っていただきたいと、私も思う。

 米ツアーにおける選手たちの強さの指標には、かつては賞金ランキングが用いられ、シーズン最終戦のツアー選手権には、そのランキング上位30人だけが出場していた。

 しかし、賞金額は大会によって異なるため、獲得賞金額だけで選手たちをランク付けするのはフェアではないという声が上がり、米ツアーは2007年からフェデックスカップというポイントシステムを導入している。さらに、レギュラーシーズン終了後に行われるプレーオフ・シリーズを創設し、当初は4試合、2019年からはザ・ノーザントラスト、BMW選手権、そしてツアー選手権の3試合で競われることになった。

 プレーオフ第1戦のザ・ノーザントラストに出場できるのは、レギュラーシーズン終了時のポイントランキング上位125名だけ。そして、第2戦のBMW選手権進出は、ザ・ノーザントラストの成績が加味された上位70名に絞られ、最終戦のツアー選手権に進出できるのは、最終的なランキング上位わずか30名のみに限定される。

 メジャー4大会の中で最も狭き門のマスターズでさえ、選ばれし名手たち100人前後が出場することを思えば、わずか30名だけのツアー選手権の間口は「超」が付くほどの狭き門だ。ましてや、その狭い間口を、毎年連続して通り続けることは「至難のワザ」と言っていい。

 その至難のワザの記録をクリアし、今年13年連続出場を果たしたのは、米国のダスティン・ジョンソンだが、それはもはや神ワザの域。そして、ジョンソンに続き、8年連続出場の記録を更新したのが、松山と米国のパトリック・リードだ。

16億5000万円のビッグボーナス

 過去には、ハンター・メイハンが2007年から、マット・クーチャーは2010年から、それぞれ8年連続出場を達成した。だが、現在進行形で記録を更新中なのは、ジョンソン、松山、リードの3人だけだ。

 それを聞いて、「タイガー・ウッズは何年連続だったのだろう?」と、疑問を持つ方もいるかもしれない。ウッズはプレーオフ・シリーズが創設された2007年に、いきなりツアー選手権を制し、「プレーオフ・シリーズはウッズのために創設されたものだ」とまで言われたものだ。

 しかし、2008年は膝の手術後で出場できず、その後も腰の手術を受けては戦線離脱を繰り返したため、ウッズがプレーオフそのものに挑んだチャンスは決して多くはなかった。2018年のツアー選手権では、フェアウエイになだれ込んだギャラリーに囲まれながら5年ぶりの大復活優勝を遂げたが、結局、ウッズがツアー選手権に出場したのは、この15年間で5回にとどまっている。

 最強の王者と言われたウッズでさえ、ポイントランキング上位30位に入り、ツアー選手権に出続けるのが難しかったことを考えると、松山の8年連続出場は「とんでもなくすごい」ことだとお分かりいただけるのではないだろうか。

 そして、ツアー選手権に出場すると、さらに特典がある。翌年のメジャー4大会すべてとジェネシス招待、スコティッシュオープンの出場資格が手に入る。

 通常は、ある試合で勝てば、メジャー大会やビッグ大会の出場資格が付与されるケースが多い中、ツアー選手権は「出るだけ」で全メジャー大会への切符がもらえるのだ。

 また、ツアー選手権で優勝すれば、驚くなかれ、15ミリオン・ダラー(1500万ドル=約16億5000万円)のビッグボーナス(プレーオフ最終戦のみ賞金ではなく、ボーナスと呼ばれる)がもらえるのだから、これは「さらにすごい」。

 また、総額46ミリオン・ダラーのボーナスはブレイクダウンしてツアー選手権に出場した全選手に支給されるため、ツアー選手権で30人中30位の最下位でも39万5000ドル(約4300万円)がもらえる。ちなみに、この金額は日本の男子ツアーで最高額を誇る日本オープンの優勝賞金4200万円を上回っており、今年は3日目のラウンド中に左手首を痛めたブルックス・ケプカが途中棄権したにもかかわらず、この39万5000ドルを手に入れた。

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