「オモウマい店」がバラエティで一人勝ちの理由 取材Dは「まるで勉強熱心な受験生」
この4月にスタートしたバラエティー番組の中でダントツの好成績を収めているのは日本テレビ系の「ヒューマングルメンタリー オモウマい店」(火曜午後7時)。人情を売り物の1つにした昭和的番組だが、意外やコアターゲットと称される比較的若い世代(13歳~49歳)の視聴率が高い。なぜだ?(以下、視聴率は全てビデオリサーチ調べ、関東地区)。
「オモウマい店」の8月24日放送の視聴率は世帯が13.5%で個人は8.9%。週間視聴率ランキングでは世帯が11位、個人が10位である。堂々の成績だ。
この番組の売り物の1つは人情。4月13日に初登場した中華料理店「珉珉」(茨城県日立市)の女将は客のことが好きでたまらず、勘定をまけたがる。客が値引きを固辞しようものなら、「騒ぐんじゃねーよ!」と声を荒らげる。
やはり客を愛し、いくら飲み食いしても1000円以上は受け取らない女将が紹介されたのは5月25日放送だ。店は「さのさ食堂」(千葉県八千代市)。80歳を過ぎた女将は自らも客と一緒に酒をあおった。
お世辞にも洗練された番組とは言えない。使われるBGMもやたら古い。令和の番組とは思えないくらい。例えば「珉珉」の回では並木路子の「リンゴの唄」(1945年)とチェリッシュの「てんとう虫のサンバ」(1973年)が繰り返し流れた。この回に限らず、昭和歌謡がガンガン流れる。
そんなこともあり、若い視聴者を引き付けるとは思えないのだが、現実は違う。非公開であるコアターゲット視聴率の8月24日分を見たところ、6.6%もある。かなり高い数字だ。
ほかの番組と比較すると分かる。同日放送のテレビ朝日「報道ステーション」(月~金曜午後9時54分)の世帯視聴率は10.0%、個人全体視聴率は5.5%とともに高いが、コア視聴率は3.2%しかない。「オモウマい店」の半分だ。また同じ日テレの長寿「踊る!さんま御殿!!」(火曜午後7時56分)の場合、世帯8.6%、個人全体5.1%、コア視聴率4.4%である。
若い層が好むとされてきた恋愛ドラマはどうか。やはり同日放送のTBS「プロミス・シンデレラ」(火曜午後10時)のコア視聴率は3.3%でやはり「オモウマい店」の半分。フジテレビ系「彼女はキレイだった」(火曜午後9時)は2.9%。やはり「オモウマい店」にはかなわない。
テレビマンすら「若い世代は恋愛ドラマが好き」と思い込みがちだが、その認識は過去のものになっているようだ。「オモウマい店」のコア視聴率は火曜日の全番組の中でトップなのだから。
コア視聴率で高い数値をマークしている番組は以下の通り。世帯、個人全体の結果とはかなり違う(8月23日~同29日)。
(1)日テレ「世界の果てまでイッテQ」8.9%(世帯12.2%、個人全体8.5%)
(2)同「有吉の壁 夏休みの壁を乗り越えろ!」7.6%(世帯8.9%、個人全体6.1%)
(3)フジ「FNSラフ&ミュージック第2夜」7.5%(世帯9.2%、個人全体6.0%)
(4)同「FNSラフ&ミュージック第1夜」7.0%(世帯8.7%、個人全体5.8%)
(5)日テレ「ヒューマングルメンタリー オモウマい店」6.6%(世帯13.5%、個人全体8.1%)
(6)同「ぐるぐるナインティナイン」6.6%(世帯10.7%、個人全体6.7%)
どうして世帯の数値とコア視聴率が大きく違うのかというと、日本の人口計約1億2600万人のうち、非コア層である50歳以上の人約6000万人が、コア視聴率では調査対象外だから。人口の約半分を調査から切り離すのだから、数値が大きく違っても不思議ではない。
「オモウマい店」の主役は飲食店主である。その人柄や生き方、つくる激安料理と爆盛り料理にフォーカスが合わせられる。一般市民が主役である点はテレビ朝日系「ポツンと一軒家」と同じだ。
「一軒家」も視聴率が高いのはご存じの通り。8月22日放送の2時間スペシャルの世帯と個人全体はそれぞれ13.0%と7.6%(8月29日放送は休止)だった。この番組も世帯視聴率の週間ベスト10の常連だ。
ところがコア視聴率は低く、3.0%しかない。「オモウマい店」の半分にも満たない。よく言われる通り、「一軒家」を見ている視聴者の大半はミドルエイジ以上なのだ。
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