「長崎IR」内定のオーストリア国営カジノは「疑獄事件」の渦中 日本法人代表は「小林幸子の夫」

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「けじめをつけさせないといけない」

 なぜY氏は「カジノ反対」の立場であるはずの牧事務所の公設秘書を務めながら、カジノを設置・運営することを目的とした会社の役員に就いているのだろうか。牧事務所に問い合わせると、議員本人が記者に電話してきて、こう聞いてきた。

「彼が勤めている企業は何という名前なのですか」

 牧氏はY氏が勤務している社名すら把握していなかったのだ。記者が説明すると、牧氏は困惑した様子で次のように語った。

「以前、Yから、オーストリアの関連企業で文書の翻訳などをする仕事をしたいと相談がありました。時差があるので、本業には差し支えることはないというので、許可しましたが、カジノ関連企業だとは、ご指摘を受けるまで知りませんでした。私とその企業とは何の関係もありません。私は以前、カジノ議連に所属していましたが、はるか前の民主党時代の話で、いまはIR反対です。事情を聞いたうえ、きちんとけじめをつけさせなければなりません」

「説明責任があることは承知しております」

 いわば、Y氏は”隠れバイト”していたようなものなのだ。一連の疑問に林氏はどう答えるか。取材を申し込んだが、多忙で対応できないとのことで、代わりにY氏が答えた。

――IRの実績がないことや本国で起きている疑獄事件についてどう捉えているか。

「確かにカジノ・オーストリアは、国際会議場や展示施設など包括的なIR施設を設置・運営した実績はありません。ただ、グループの一角としてこれから作ろうとしている規模の施設に参画した実績はあります。疑獄事件については他媒体からも問い合わせを受けており、説明責任があることは承知しております。きちんとご説明できるよう本国に問い合わせている最中ですが、まだ返事がない状況です」

――日本法人に林氏が就任した経緯について教えて欲しい。

「林さんとオーストリアは20年以上前からの縁です。再生医療の会社を興す前は、オーストリアが作っている水を日本に仕入れる仕事もしていたと聞いています。東日本大震災後、福島のコーラス隊と現地の少年合唱団とのコンサートを主宰するチャリテイ活動も続けてきました。その活動が認められ、ウィーンから名誉市民賞もいただいている。

 そういう流れの中で、日本でパートナーになってほしいと先方から依頼を受け、引き受けることになったのです。その際、林さんはIR施設のなかに、医療施設を設けたいという条件を出した。それは、県への提案書の中にも盛り込まれています」

――あなたが牧議員の公設秘書と兼職して役員に入っているのはどういう経緯なのか。

「私と林さんとの付き合いは、10年以上の間柄です。鹿野先生の秘書をしていた頃、小林幸子さんと接点ができたことがきっかけです。その後、林さんがIR事業を始めるにあたり、私の語学力などを買っていただき、お声がけいただきました。役員として名前は入っておりますが、完全なボランテイアとして無報酬でお仕事させていただいております。

 牧に自分の仕事についてちゃんとした説明を怠っていたという反省はあります。牧もお話ししていた通り、牧自身はIRに一切関知していません。ただ、(秘書給与法に基づく)兼職規定に則って、ちゃんと兼職届を議会に提出しておりますので、法的にも倫理的にも問題はありません」

 以上がY氏の説明である。これだけの疑問がある以上、代表の林氏が一つひとつ丁寧に説明責任を果たしていくべきであろう。県もしかりである。このような混沌とした状況のなか、国の認可に向けてこのまま突き進んで大丈夫なのかーー。

デイリー新潮取材班

2021年9月6日掲載

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