「長崎IR」内定のオーストリア国営カジノは「疑獄事件」の渦中 日本法人代表は「小林幸子の夫」

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 長崎県が誘致を進めるIR(カジノを含む統合型リゾート)の設置・運営事業予定者が決定した。日本法人の代表は演歌歌手・小林幸子の夫であるが、早くも苦境に立たされている。親会社であるオーストリアの国営カジノは、母国で疑獄事件への関与が疑われるなどの問題を抱えており、長崎県の調査が適正に行われたか疑問視する声も一部で出始めているのである。

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“出来レース”

 8月30日、長崎県は、誘致を進めてきたIR設置・運営事業者として「カジノ・オーストリア・インターナショナル・ジャパン」を選定し、基本協定を締結したと発表した。この日本法人の代表取締役社長が、小林幸子の夫である林明男氏なのだが、まずは同社が置かれている状況から話を進めていきたい。

 同社の親会社はオーストリアの国営企業「カジノ・オーストリア・インターナショナル」。欧州を中心に35カ国で215のカジノと娯楽施設の開設に関わってきたカジノ業者である。今後、同社の事業計画をもとに長崎県が区域整備計画を作り、来年4月28日までに国に申請する。

 地元記者が解説する。

「横浜ではカジノ反対派市長が誕生したばかりですが、長崎はまるで様相が違います。地元政財界は、観光の起爆剤になると歓迎ムード。国の認可が降り次第、佐世保市のハウステンボス内の31ヘクタールの土地に、カジノ施設や展示場、『ホテルハイアット』などの外資系ホテルを建設していく予定です。開発総事業費は3500億円、年間840万人の集客を見込み、2024年後半の開業を目指すとしています」

「1100万円も支払わされたのに……」

 これから国の認可に向けて、手を携えていこうとする県とカジノ・オーストリア。それに”待った”をかけているのは、最終審査で敗退した2事業者である。両社は県の審査は「出来レース」と主張しているのだ。最終審査に残っていたのは3社だが、両社は8月4日に県が行なった最終プレゼン前に、「不当に『廉潔性』に問題があると指摘され、公募から撤退するよう迫られた」と訴えている。廉潔性とは、カジノを運営する業者としてクリーンであるかという指標のことだ。

 落選した「ニキ&チャウフー(パークビュー)グループ」の関係者はこう憤る。

「私たちは1次審査が通ったあとの今年5月、県から廉潔性の調査に必要だと言われて、1100万円を納めました。そんな高額な調査を経て、県が何を示したかというと、ネット上のソースが怪しいような話ばかり。我々は繰り返し県にちゃんとしたエビデンスを提示するよう要求しましたが、最後まで納得いく説明はありませんでした。そのままプレゼンに進んだものの、結果は落選。県は初めからカジノ・オーストリアありきで動いていた節があるのです。県には選考のやり直しを求める要望書を提出しています」

 次点で落選した「オシドリ・コンソーシアム」も同様の対応を受けたと主張。県に対して情報開示請求を行なったことを明らかにしている。
 
 審査は県から独立した第三者委が行なったとされている。二社に中国資本が入っていることを県が懸念し、審査に介入したという噂もあるが、県は審査内容について項目ごとの採点結果しか開示おらず、真相は藪のなかだ。

現職の財務大臣汚職疑惑にも関与

 では、最終審査でトップの点数を獲得したカジノ・オーストリアの廉潔性は大丈夫なのだろうか。実は廉潔どころか、母国では政界スキャンダルの渦中にあるのである。

「きっかけは、2019年、当時の副首相が支援者に利益供与を約束している様子を映した“隠し撮り動画”が流出したことでした。動画には、オーストリア大手カジノゲームメーカー『ノボマティック社』が政治家に違法献金を行なっていることを、副首相が示唆する言動も記録されていた。ノボ社は、カジノ・オーストリアの主要株主でした」(欧州事情に詳しいジャーナリスト)

 その後、オーストリア自由党に所属する政治家が、カジノ・オーストリアの最高財務責任者に就任したことを受け、政権とカジノ・オーストリアの癒着構造に批判が集中する。政治家はすぐに解雇され、ノボ社も株を手放すことに。21年2月には、現職の財務大臣がノボ社から賄賂を受け取る見返りとして、カジノ運営許可について便宜を図っていた嫌疑も浮上。オーストリア検察が財務大臣宅を家宅捜索に入る疑獄事件に発展していくのである。

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