貧富の差を是正し「共同富裕」を目指すと言い出した習近平 背景に急激な人口減少?

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最速で進む高齢化問題も深刻化

 1950年代から60年代にかけての中国では、毛沢東の号令を受けて1組の夫婦が5~6人の子どもを出産するのは当たり前だった。だが現在の中国では不動産価格や教育費の高騰などの影響で、「子どもは1人で十分」という認識が広く定着しており、政府の号令に従う国民はほとんどいない。

 中国政府は8月31日、住宅価格の高騰を抑制するため、都市部の家賃を抑える方針を表明した。教育費の高騰対策として小中学生を対象とした学習塾を非営利団体にする動きも見せており、決め手になるのは子育て世代の懐を豊かにすることだ。子育て手当の支給を検討する地方政府が出てきているものの、新型コロナウイルス対応の減税などで財政は逼迫しており、子育て関連の支出を拡充する余地が乏しいという。「乳幼児のみを対象にした支援策では期間が短すぎる」との声も上がっている。

 少子化は、主要国中最速で進む中国の高齢化問題も深刻化させることになる。2億人以上の団塊世代は来年から60歳定年を迎え始める。2035年には60歳以上の高齢者の割合が30パーセントを超えるとされ、今後中国の社会保障経費は爆発的に増加する。

 そもそも最初に「共同富裕」というスローガンを唱えたのは毛沢東だ。人口問題を解決するため、「喉から手が出る」ほどカネがほしい中国政府にとって、頼みの綱は建国の父である毛沢東の威光だったのではないかと思えてならない。

 しかし、最近の日本のように少子高齢化が進めば社会の保守的な傾向が強まる。習政権の下で中国指導部の高齢化も進んでいる。現在の中国が、難局を乗り切るために不可欠な改革を果断に実施できる可能性は低いのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮取材班編集

2021年9月6日掲載

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