「列車が途中で立ち往生したら…」乗車前の準備は? 停電した車内では? 脱出までの時間は?

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夏ならば冷房、冬ならば暖房が止まり

 2021(令和3)年6月20日、JR東日本の東京都心部の路線で、駅と駅との間で列車が長時間立ち往生し、停電した車内に取り残される事態が発生した。乗客は数時間後、車両から降りて駅を目指すことになったわけだが、JR東日本などへの取材も踏まえ、「列車が途中で立ち往生したら……」について、鉄道ジャーナリストの梅原淳氏が検証する。

 乗っている列車が長時間遅れるのは嫌なものだ。定員乗車の状態でも立っている人のほうが多い通勤電車はもちろん、皆が着席していられる新幹線や特急列車でもいらいらさせられるのは変わらない。

 中でも不快なのは、列車が駅と駅との間で立ち往生してしまう事態であろう。ましてや、車内が停電してしまったら目も当てられない。車内の環境は一変し、夏ならば冷房、冬ならば暖房が止まり、蒸し風呂の中か冷蔵庫の中に閉じ込められた状態で運転の再開を待つ必要が生じる。否、復旧して列車がもう一度走り出してくれればまだよいほうだ。結局、列車の運転が再開されず、車両から降りて近くの駅を徒歩で目指すとなると、苦行に苦行を重ねるようなものである。過去に経験された皆様にはお気の毒様としか言いようがない。

 駅と駅との間で列車が長時間立ち往生し、そして乗客が車両から降りて駅を目指すという悪夢の出来事が2021年6月20日にJR東日本の東京都心部の路線で起きた。同日の17時33分ごろ、山手線、そして隣の線路を走る埼京線や湘南新宿ラインの架線に電力を供給する渋谷変電所でトラブルが発生したのである。いま挙げた路線の全線で列車の運転がストップしたうえ、一部の列車では架線への電力の供給が止まり、車内は停電となってしまったのだ。

 トラブル自体はもう忘れ去られようとしているが、駅間で列車が立ち往生する自体は今後も予想される。今回のトラブルを掘り下げつつ、対策であるとか今後の展望を紹介しよう。

何本の列車が走行中だったのか?

 渋谷変電所のトラブルで山手線、埼京線・湘南新宿ラインの列車が止まったとは何度も報じられた。それでは、トラブルが発生した時点で一体何本の列車が走行中であったのだろうか。

 筆者が市販の時刻表類で調べたところ、東京の都心部を一周する山手線には40本、埼京線・湘南新宿ラインのうち、大崎-池袋間には7本の合わせて47本の列車が運転中であった。

内訳は、山手線の列車が外回り、内回りとも20本ずつ、埼京線・湘南新宿ラインでは池袋駅方面が3本、大崎駅方面が4本である。これらのうち、17時33分の時点で駅と駅との間を走行していたとみられる列車の本数は山手線が21本(外回り11本、内回り10本)、埼京線・湘南新宿ラインが6本(池袋駅方面・大崎駅方面とも3本ずつ)の合わせて27本と結構な本数であった。

 一方でJR東日本によると、いま挙げた27本とみられる走行中の列車のうち、停電によって駅と駅との間に停車した列車の本数は山手線では5本、埼京線・湘南新宿ラインでは埼京線の列車1本の合わせて6本であったという。したがって、残る21本の列車はそのまま次の駅まで走り続けたか、いったん停止はしたものの、比較的早く走り出して駅に到着したと考えられる。

 停電した区間をJR東日本が発表していないので推測すると、山手線では五反田-新宿間付近、埼京線・湘南新宿ラインでは大崎-新宿間付近らしい。筆者の調査では、トラブル発生時にいま挙げた区間を走行中であったと思われる列車の本数は、山手線では5本(外回り3本、内回り2本)、埼京線・湘南新宿ラインでは5本(池袋駅方面3本、大崎駅方面2本)であった。山手線の列車の本数はJR東日本の発表と一致し、埼京線・湘南新宿ラインの列車の本数は4本多い。埼京線・湘南新宿ラインの列車は実際には駅に停車していたのであろう。

 JR東日本によると停電によって駅間に停車した6本の列車のうち、山手線の2本の列車は駅を出発直後か到着直前であったという。一部の車両が駅のホームに差しかかっていたことから、11両編成の列車のうち何両か分の扉が開き、乗客は列車から降りることができた。

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