韓国が大連の「日本がテーマの商業施設」に噛みつき 「植民地でショッピング?」「日系企業を誘致すれば放射能までやってくる」の声
伊藤博文を狙撃した安重根が
そもそも反日色が強ければ、中国の不動産会社がわざわざ1020億円もの総工費を投じ、中国最大規模の総合商業施設など建設しないはずだ。先述の通り、大連はかねて日系企業が多く進出しており、“親日”的な傾向が強い。それだけに相応の需要が見込めるということなのだろう。
実際、日本風情街は、日本との経済連携を強化する目的で設けられた「中日(大連)地方都市発展協力モデル区」内に造られている。これは中国の国家発展改革委員会が設けたモデル区で、大連市の他にも上海市、天津市、青島市、蘇州市、成都市が2020年4月付で設置を許可されている。日本風情街はいわば中国国家お墨付きの商業施設なのだ。
しかし、韓国メディアは「大連は日帝侵略の被害を受けた地」であると報道すると共に、「大連の近くに位置する旅順は、伊藤博文を狙撃した安重根(アン・ジュングン)が収監され、死刑が執行された地だ」とも報じた。
とにかく「反日」をもとにした強引な論理を作っては否定的に論じるのである。しかしこのような理屈を言い出せば、東京、広島、長崎をはじめ日本中の都市にはアメリカンテイストの店や施設を作ることも許されなくなる。大量の市民が米軍に殺された土地なのだ。世界中のあらゆる国、土地には負の歴史もあるだろう。が、それをもとに現在の前向きな取り組みを否定するのはおよそ生産的ではないのではないか。
また、当時の朝鮮は日本の一部だったのだから、中国からすれば侵略者側だとも言える。
日系企業を誘致すれば放射能までやってくる
もっとも、こうしたアグレッシブな姿勢は日本だけではなく中国にまで向けられている。最近、社会・経済的な分野において、韓国は対中国で強硬な態度を見せることがあるのだ。たとえば今年に入って、韓国・江原道(カンウォンド)の中国人街構想が“反中”運動の煽りをモロに受けている。大統領府に寄せられた国民からの請願には「江原道チャイナタウン建設を撤回してください」と掲示され、60万人以上もの人が賛同。その後、運営側は“チャイナタウン”から“韓中文化タウン”と名称を変更し、騒動鎮火に追い込まれている。
およそ「未来志向」とは程遠いスタンスが見て取れるのだが、当然、その場合の最大の標的は日本である。2019年に京畿道(キョンギド)の「べゴッ新都市」に「ジャパンタウン」を造ることが発表された時も、“反日”運動の高まりで頓挫した経緯がある。同じく国民からの請願には「ジャパンタウン造成を無効にしてほしい」というものが掲示され、9万8千人もの賛同を得た。
その後、日本製品不買運動が始まり、関連企業らが入居する予定であった店舗は80%が空き状態に。現在に至るまで不買運動は終息していないから、「べゴッ新都市」のジャパンタウン構想も暗礁に乗り上げたままだ。
さらに遡って2012年に釜山で浮上したジャパンタウン建設案もトラブルに遭遇した。2011年に起こった東日本大震災の影響により、日本への訪問を回避した自国民を呼び込もうと計画されたものである。釜山の日本人居住者が増加していたことも建設案が持ち上がった背景にあった。
この時期は外国人投資誘致担当機関のKOTRAインベストコリアが「欧米経済が不安定な状況下、韓国が投資を誘致する先は日本しかない」「ジャパンタウンを造って日本の資金810兆ウォン(約80兆円)を引っ張ってこなければならない」と号令をかけたタイミングでもある。しかし、地元住民の大反対などによって、こちらもオープンするに至らなかった。反対意見の中には「日系企業や日本人を誘致すれば放射能までやってくる」といった偏見と差別に満ちたものまであったという。
今回の日本風情街の一件もこれまでの例と同様に、韓国内に漂う排他的な空気が表に出てきた典型だと見て取れるかもしれない。
結局、この日本風情街は批判的な意見と新型コロナウイルス感染対策などを理由に9月からいったん営業を停止したという。その背景に、本来関係ない国からの攻撃もあったとすれば何とも罪作りな話である。
[2/2ページ]