スタバ、フラペチーノも“紙ストロー”で波紋 専門家は「ふやけるのは仕方ない」

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レジ袋有料化の効果は?

 とはいえ、「自分はポイ捨てしないから、海の汚染とは関係がない」と考える人も多いだろう。確かにごみ箱にきちんと捨てれば、海に直接ストローが流れてしまうことは無い。ポイ捨てをしないなら、プラスチック製ストローを使っても影響は無いのだろうか。

「紙のストローも、ごみ箱に捨てられた後は焼却処分され、その過程で二酸化炭素が排出されるという点は、プラスチック製のストローと同じです。ここで出てくるのがカーボンニュートラルという考え方で、紙製ストローは元をたどれば木で、当然、木は二酸化炭素を吸って酸素を出すわけですから、環境にとって良い働きをします。一方、プラスチック製ストローは石油から出来ているので、もともと環境に優しい素材では無かった。焼却処分をするときに二酸化炭素を排出するという点は同じでも、木や森林は二酸化炭素の排出分の埋め合わせが出来ます。環境に優しい素材を増やしていくことは、二酸化炭素など温室効果ガスをプラスマイナスゼロにすることに繋がるのです」(同)

 プラスチック削減と言えば、昨年7月にレジ袋が有料化し、マイバッグを持ち歩く人が増えた。有料化から1年以上が経ち、その効果はあったのだろうか。

「レジ袋のごみが減ったことは確かですが、それが海の環境に良い影響を与えたことが確かめられるまでは、まだ時間が掛かります。レジ袋の削減を早くから進めていた中米などでは、海に漂着するごみの量が減ったという報告がありますから、もう少しすれば日本でも成果が見えると期待しています。一方で、残念ながらコロナ禍でマスクや持ち帰り用のプラスチック容器のごみが増えてしまっています。さらに今後は、プラスチックごみの割合として最も大きいペットボトルの削減も目指していくべきです」(同)

脱ペットボトルしなかった東京オリンピック

 海外では脱ペットボトルの動きが進んでいる。2016年、アメリカ・サンフランシスコではペットボトル入りの飲料水の販売が禁止された。さらに、中国・青島でも空港に、マイボトルを持参すれば、誰でも無料で水を汲める機械が設置されている。

「ペットボトルを買わないようにするという動きは、日本ではまだあまり浸透していません。東京オリンピックでも、脱ペットボトルの大会にする計画が当初あったようですが、実際にはスポンサーのコカ・コーラのペットボトルが大量に消費されていました。マラソンの給水など、一部ではペットボトルが必要かもしれませんが、その他の競技ではペットボトルを使わない方法もあったと思います。ペットボトルではなくマイボトルを使っているところがテレビで中継されれば、世界に向けてアピールする場にも出来たのに、残念でした」(同)

マイクロプラスチックとは?

 最後に、最近よく聞く「マイクロプラスチック」とは一体どういうものなのか解説してもらった。

「海に流れたプラスチックは、紫外線や波の力によって粉砕され、マイクロプラスチックと呼ばれる5ミリ以下の小さな破片になります。そのマイクロプラスチックを海の生物が餌などと一緒に体に取り込み、さらにプラスチックに含まれる有害物質は身の方にまで浸透することが分かっています。そして、その有害物質が含まれた魚の身を食べると、我々人間の生殖機能や免疫に悪影響を及ぼす可能性があることが分かっています。実際に我々の調査では、東京湾のスズキの胃の中からは5ミリ程度のマイクロプラスチックが見つかり、カタクチイワシの胃の中からもさらに小さい1ミリ程度のマイクロプラスチックが見つかりました。スターバックスの紙ストロー化をきっかけに、海のプラスチック問題に関心が集まることを期待しています」(同)

デイリー新潮取材班

2021年9月1日掲載

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