首位オリックスの原動力「ラオウ杉本」 3年で才能を開花させたトレーナーが明かすトレーニング法

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ボールに力を伝える骨盤の動き

 これで、次の年もある程度は起用してもらえるはずだ。そうしたメドが立ち、杉本は打率と飛距離の両立を目指すことにした。

 その取り組みの一つが、浅村栄斗(楽天)モデルのバットを使い始めたことだ。2020年に本塁打王を獲得した浅村は打率も残せるタイプで、バットにもハイブリッド型という特徴があった。

 同時に行ったのが、インコースへの対応だ。その狙いを高島氏が説明する。

「外角はボール球の見極めさえできれば、ある程度打つことができます。外を打てるようになると、一軍ではインコースを厳しく攻められるようになる。それを乗り越えた選手が3割バッターになることができます」

 杉本は身体動作的に、骨盤が外を向いている状態でインコースに対応しようとしていた。それでは力の伝達が非効率になり、強い打球を飛ばすことができない。そこでコアベロシティベルトという収縮性のあるチューブがついた器具を使い、ボールにしっかり力を伝えるべく骨盤の動きを調整した。高島氏が振り返る。

「骨盤の動きさえ合えば、たとえ詰まっても強い打球が飛ばせるというイメージを持てるようにしました。同時にトレーニングを行い、骨盤が動けるスペースを作りました」

 そうして迎えた今季、打撃3部門でいずれも上位につけている。たとえインコースに詰まらされても、レフトスタンドに弾き返すこともできるようになった。シーズン中も連絡をとる高島氏は、杉本の好調をこう見ている。

「泳がされても対応できるようになりましたし、今は相手がすごく警戒してくれています。前の打順に吉田正尚というすごくいいバッターがいるので、相手投手がかなり消耗した上で打席が回って来るのは非常にいい。チャンスで打つことを求められるので、大変な役割でもありますけどね」

 4番に求められる仕事は、好機で走者を還すことだ。チームが歓喜の瞬間を目指して戦うなか、杉本にとってますます真価を問われる打席が多くなる。

中島大輔
1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年からセルティックの中村俊輔を4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

デイリー新潮取材班編集

2021年9月1日掲載

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