短パンの石川遼 カラフルファッション、マッチョ化…賛否両論も本人は「変わっていくのがいい」

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ドライバーをブンブン振り回し

 2010年にファッショナブルなリッキー・ファウラーがデビューして大人気になると、石川とファウラーはしばしば同組になった。全身オレンジ色のウエアに身を包んだファウラーの傍らで、石川は全身グリーンだったり、全身真っ赤だったり、赤い帽子と白いウエアだったり。米メディアはあまりにもカラフルな2人を、色とりどりの「M&Mチョコレートのようだ」などとたとえていたが、ファッション性や華やかさでファウラーと競い合える選手は、日本でも世界でも石川以外にはいなかったし、今でもいないだろう。

 2011年の夏、石川は世界選手権のブリヂストン招待(当時)で米ツアー初優勝のチャンスを掴み、最終日最終組で回った。1番ティでオーストラリアのアダム・スコットが静かにスタートを待っていた傍らで、石川だけがドライバーをブンブン振り回しながら素振りを続ける姿は、あまりにも対照的だった。緊張と興奮に押し潰されそうになりながら戦った石川は、勝利を逃がし、4位タイに終わったが、それでも大勢の米メディアが石川の健闘を讃えたことを今でもよく覚えている。

 2013年にようやく米ツアーの正式メンバーになり、スポット参戦から本格参戦にスタイルを変えたが、皮肉にも腰痛悪化も本格化した。それでも彼は歯を食い縛って練習と試合出場を繰り返したが、腰はさらに悪化した。

「試合を休めば抜かされると思った。試合に出ないことが怖かった」

 石川は心に正直に突き進む一方で、正直に振り返り、正直に語る。だから、みんなに愛される。

「体内温度を1度上げれば……」

 2016年2月、腰が限界を迎え、戦線離脱した後、公傷制度が適用され、2017年に米ツアー再挑戦を開始したときも、石川は正直にこう言った。

「昔の僕は両サイドにOBがあることも知らず、だから思い切りドライバーを振っていた。若かったってことですよね」

 そう振り返った石川は、今度はこんなことを明かしてくれた。

「最近は、スタート4時間前からウォーミングアップを始めます。自分の体を知り、自己治癒力を高めるんです。体内温度を1度上げれば、自己治癒力は格段に高まる。体内温度を高く保つためにはどうするべきかと考え、ボールを打つ練習を減らしてでもトレーニングにかける時間を増やしました。自分でやるトレーニングは、以前は10~20分だったけど、今は1時間以上です。マッサージだけでは筋肉は強くならないですからね」

 自分の肉体をよく知り、その高め方や維持の仕方をよく知り、それを実践していくことが何より大事だと力説した。

「僕、アメリカでPGAツアーに出始めた最初のころは、予選カットラインがどのぐらいになるかさえ知らなかったし、わからなかった。自分が一緒に回っている目の前の選手より、上手いのかどうかもわからなかったんです。僕自身、ずいぶん変わったと思います」

 そんな変化を経験した石川だからこそ、自身の風貌も、男子選手の短パンの是非に関しても、「変わっていくことは不自然なことではない」と考えるのだろう。

 なるほど、石川らしいなと、あらためて頷かされた。

舩越園子(ふなこし・そのこ)
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授
東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS』(徳間書店)が好評発売中。

デイリー新潮取材班編集

2021年8月31日掲載

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