知床でのトドの駆除をユネスコが問題視 漁業被害額は年間2億円
7月26日、奄美・沖縄が世界自然遺産に登録された。そのおめでたいニュースをよそに、世界遺産を決めるユネスコ(国連教育科学文化機関)が日本を問題視していることをご存じだろうか。
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ユネスコの世界遺産委員会がトドの駆除について中止や縮小を検討するよう政府に求める決議を採択したのは7月23日のこと。場所は知床である。
野生生物の保護や調査などを行っている「知床財団」の担当者が言う。
「世界自然遺産は登録されてからも、数年おきに保全状況を審査されます。知床も今回で6度目ですが、毎回、問題にされてきたのがトドの駆除なのです」
知床周辺は北海道有数の漁場である。そこへ春先になると千島列島から流氷に乗ってトドがやってくる。
「トドはオスになると体重1トンを超え、1日数十キロの魚介類を食べます。当然、漁網にタラなどが入っているとそれも食い散らかす。簡単に網を破ってしまうので、敵視する漁師は少なくありません。ロシアとの共同調査で、毎年100~150頭が根室海峡で確認されていますが、実際の数はもっと多い」(同)
トドによる知床の漁業被害額は年間2億円弱。放っておけば増える一方で、羅臼漁協などでは地元の猟友会に毎年駆除を依頼している。その猟友会の幹部によると、
「猟師は船から銃でトドを撃つのですが、場所が世界遺産だけに見つけ次第駆除というわけにはいかない。まずは海面を撃って追い払う。それでも網に近づく慣れた奴を追いかけて仕留めるわけです」
駆除されるトドは年間15頭前後。生息数を調査している研究者によると、絶滅に追い込むような数ではないが、これが世界遺産委員会の決定に大きな影響力を持つ「IUCN(国際自然保護連合)」という組織のお気に召さないらしい。
「IUCNはレッドリスト(絶滅危惧種の指定)で知られていますが、とくにトドやアザラシなどの海獣については神経質。欧米に比べて日本は積極的な保護の精神が足りないと思っているのでしょう」(研究者)
それなら漁師の生活を守ってくれるのか、と文句を言ったところでユネスコは聞く耳を持つまい。