銀座「ライオンズクラブ」が舞台 「生演奏サロン」のオーナーは詐欺師だった 闇に消えた30億円
つなぎ資金
目下、東京・銀座で出資詐欺事件が発生中だ。首謀者は、「東京並木通りライオンズクラブ」を2015年に創設したメンバーの一人。ブランドショップが林立する並木通り沿いで、女子音大生らがクラシックを生演奏するサロンのオーナー、I氏である。
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東京並木通りライオンズクラブの会員によると、昨年9月15日、I氏から「ジェイブリッツ」というクレジットカード決済代行会社への出資を勧誘されたという。
一般的に、顧客がクレジットカードで決済すると、その代金が店側に振り込まれるのは翌月の月末など。だが、I氏の誘い文句は、飲食店がジェイブリッツのカード端末機を利用した場合、10~15%と手数料は割高なものの、翌日入金が可能とのことだった。
「コロナ禍で、目先の資金を確保しようとする飲食店が増え、ジェイブリッツが手掛ける、その“ファクタリング事業”は繁盛していると。代わりに、立替払いした代金がクレジットカード会社から支払われるまで、ジェイブリッツは“つなぎ資金”を用意しなければならない。しかし、元手が追いつかず、Iはジェイブリッツの社長から直々に資金調達の依頼を受けたとのことでした」
被害総額30億円
詐欺の舞台装置に仕立てられたジェイブリッツは、大手農機具メーカー「ヤンマー」の特約店系列で実在する企業。そもそも、ファクタリング事業は手掛けておらず、勝手に名前を使われた“被害者”だ。
ライオンズクラブ会員によると、I氏を介して出資すれば、特別に、毎月15日と月末の2回、3%ずつの配当を支払うと言われ、Iが指定する口座に3500万円を入金。しかし初回の配当すら入らぬまま、昨年9月末、Iは姿を消した。
実は、失踪直前、I氏は代理人弁護士にすべてを明かしていた。曰く、ライオンズクラブ創設と同時期の6年前から詐欺に手を染め、当初から、出資者から得た資金を以前の出資者への配当にまわす自転車操業状態だった、云々。
クレジットカードでの支払代金を少しでも早く手にしたい。そんな経営側の心理を言葉巧みに操り、出資者を募ったI氏。近年は、コロナ禍で苦しむ飲食店の苦境もつけ加えていたわけだ。被害者は数十人に上り、30億円が闇に消えたとされる。
「週刊新潮」2021年8月26日号「MONEY」欄の有料版では、複数の被害者証言によりI氏の話が詐欺と露見するまでを詳報する。