自宅療養者になった場合にできること 血栓を防ぐ方法、家族との過ごし方は

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 感染力2倍のデルタ株の蔓延に災害級との声も上がる。だが、感染拡大して1年半、新型コロナ患者の受け入れ態勢がまるで拡充されないという事実こそが、災害ではないのか。ともかく政府は頼れない以上、わが身は自分で守るしかない。その術をお伝えしたい。

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 感染力が従来株の2倍近いデルタ株が猛威を振るい、新型コロナの1日あたりの新規感染者数は、東京都で5千人、全国では2万人の大台を超えた。その状況を専門家らは「災害級の危機」と呼び、医療はすでに逼迫していると訴える。

 実際、そうなのだろう、たとえば、東京都の重症者数は268人(8月16日現在)。重症者用の確保病床数は392だから、占有率は68%だ。とはいえ、どこか釈然としないものが残らなくはないか。

 試みに、次の夏季五輪開催地、パリとくらべてみたい。東京五輪の閉会式でパリからの中継映像が流されたが、群衆が密になってアピールする様子に、違和感を覚えた向きもあるだろう。パリの感染状況は、一時よりは改善しているが、東京より良いとも言えない。

 パリを含むイル・ド・フランス地域圏の人口は、東京都の1405万人に近い1221万人で、比較には好適だ。8月12日現在、10万人当たりの発生率は192人で、東京の198人より若干少ない。一方、重症者数は東京の1・5倍の369人だが、重症者用の病床使用率は32%にすぎない。東京都の3倍近い1100前後の病床が確保されているため、密になることに、さほど神経を尖らせる必要もないのである。

 政府分科会の尾身茂会長は、東京都の人出を5割削減するように訴えた。しかし、日本医師会等に、欧米と同程度のコロナ患者の受け入れ態勢を求めるのが先ではないのか。われわれが負わされているのは、ひとえに政府や専門家が、医療体制の整備をサボってきたツケだといえる。

 それでも病床がかぎられ、中等症でも自宅療養になる現実がある以上、身を守る術を心得ておくしかない。

 ところで、尾身会長の発言にはもう一つ、看過できない点がある。ワクチン接種が進んでいる現実に、一切触れないことだ。日本でも2回のワクチン接種を終えた人は、フランスの52%超には負けるが、37・2%に達し、65歳以上の高齢者にかぎれば83・9%にもなる(8月15日現在)。

 ところが、ワクチンを打っていようがいまいが、同様に行動を慎めというメッセージは、ワクチンに効果がないという誤解につながる。ワクチン接種を終えた高齢者がさらに自粛し、接種に消極的な若年層が、ますます羽を伸ばすとしたら、尾身会長の罪は重い。

 ワクチンの効果は、強調しなければなるまい。浜松医療センター感染症管理特別顧問の矢野邦夫医師は、

「感染予防、発症予防、重症化予防の三つの効果があり、ファイザー製もモデルナ製も、重症化予防についてはしっかりと効果を発揮しています。2回打って2週間たてば、重症化して死亡することはなかなかない、と思って大丈夫です」

 と訴える。東京歯科大学市川総合病院の寺嶋毅教授も、データを示して言う。

「ファイザーとモデルナのmRNAワクチンは、英国とスコットランドの研究では、デルタ株に対する感染予防が79%、発症予防が88%、入院予防が96%。カナダの研究では感染予防が87%、入院と死亡の予防が100%。イスラエルでは感染予防は64%と低めですが、入院や死亡予防は93%。米国の研究では、モデルナ製の感染予防が76%、入院予防が81%で、ファイザー製は少し低く、感染予防は42%ですが、入院予防は75%です」

 ワクチン接種後に感染したという例も少なくはないが、それでも、重症化するリスクは確実に低減している。2回の接種を終えた人は、さほど神経質になる必要はないのである。

かかりつけ医のサポートを

 とはいえ、仮に自分が自宅療養を強いられたときのことを考えると、不安を覚える人が多いのではないか。ワクチン接種を終えていなければなおさらだろう。あるいは、家族が自宅療養者になったら――。

 だが、自ら備えることで、不安は最小限に抑えることができる。そのための策を記していきたい。

「普段からかかりつけ医を作っておくことが第一」

 と、東京都医師会の角田徹副会長は強調する。

「かかりつけ医とは、持病があって常に通っている医師と考えるかもしれませんが、風邪をひいたときだけかかる医師も、患者さんのカルテや情報はしっかり保存しているので、連絡してもらえれば、適切なアドバイスが受けられるはず。3年前に1度受診しただけであっても、当時の情報は残っているので、遠慮せずに連絡してください」

 しかも、かかりつけ医の重要度は増しているようで、角田副会長が続ける。

「医療機関で検査し、陽性と判明すると、医師は保健所に発生届を提出し、その後、保健所が患者に連絡します。しかし、通常は発生届が出された翌日には患者に連絡が行くのに、いまは連絡に5日くらいかかってしまうことも。このため地域によってはその間、発生届を出した医師が電話やメールで、1日1回体温を確認し、せきや息苦しさがないかどうか健康観察を行うなどしています」

 東京都医師会も、そうした体制作りを進めており、

「保健所から連絡を受けるまでの間、検査した医療機関が健康観察し、入院が必要と判断したら、都庁に設けたホットラインに医師が連絡して調整する仕組みを、都庁と検討しています。また、保健所は患者に連絡できたとしても、いまや10日間の自宅療養の間、毎日行うべき健康観察に手が回らないので、引き続き、地域のかかりつけ医が診ていくようにしています。かかりつけ医がない場合も、保健所から送られたURLにアクセスすると、診る余裕のある東京都の医師たちが自分の地域の患者さんを見つけ、医師からアクセスしてリモート診療する仕組みを作ろうとしています。すでに都内の多くの地区では、必要があれば医師会単位で往診する仕組みを作ってくれています」

 自分の住む地域で、こうした体制がどう整備されているか、確認しておいたほうがいいだろう。

 事前にチェックしたいことに、訪問看護の有無もある。北須磨訪問看護・リハビリセンター所長で訪問看護師の藤田愛さんが言う。

「私は第4波の際、51人のコロナ患者さんを受け持ち、計310回、お宅で訪問看護しました。現場でまず行うのは見立て。体調はどうか、呼吸はどうか、脱水を起こしていないか、といった点に加え、家族の助けがあるか、10日間療養するのになにが必要か、といったことを、一人ひとり地道に見極めます。その後、患者さんの症状に合わせ、酸素、ステロイド、抗生物質、点滴を組み合わせて処置していました。また一人暮らしの患者さんの場合、お買い物のお手伝い等、生活支援をすることも」

 まことに心強い存在なのだが、ただし――。

「訪問看護のシステムは、自治体ごとにまったく異なるので、コロナに感染する前に、自分の住む自治体の訪問看護システムを調べておくとよいでしょう。多くの自治体で、保健所やかかりつけ医の指示がなければ、訪問看護師は働けないようになっています」

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