コロナで自宅療養になったら……絶対知っておくべき「パルスオキシメーター」の使い方を医師が解説

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 今月20日、小池百合子東京都知事が「デルタ株はもう皆さんのすぐ隣にいるという意識を持っていただきたい」と述べたように、今やもう、自分や家族が新型コロナにいつ感染してもおかしくはない。実際に、全国の自宅療養者は約9万7000人を超え、8月に入ってから都内で自宅療養中に亡くなった人の数は15人に上った。そうした中、医師が「いざという時のために今準備しておくと安心」というのが、血中の酸素飽和度を測る「パルスオキシメーター」である。

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 パルスオキシメーターについて解説してくれるのは、浜松医療センター感染症管理特別顧問の矢野邦夫医師。そもそも、パルスオキシメーターを個人で準備する必要はあるのだろうか。

「自宅療養者には自治体からパルスオキシメーターが貸与される場合がありますが、感染者数の急激な増加によって貸与が間に合っていないところもあるようです。さらに、回復者からの返却が遅れており、必要とする自宅療養者の手元になかなか行き渡っていないというのが現状です。自分や家族がいつ感染し自宅療養になるか分からない今、あらかじめパルスオキシメーターを準備しておくと安心でしょう」

 パルスオキシメーターとは、動脈中の酸素飽和度を測定する機器で、サイズは5~6センチ程度。クリップに中指や人差し指を挟んでしばらく待つと、液晶画面に酸素飽和度が表示される。

「測定自体はとても簡単です。ただしトイレに行くなど運動をした直後ではなく、安静な状態で測ることに注意してください。さらに、手が冷えている時や、アルコールで消毒した後の血管が収縮した状態では数値が低く出るので、そういう場合は少し時間をおいて何度か測り直してください」(同)

息苦しさよりも数値が重要

 人それぞれ平熱が違うように、酸素飽和度にも個人差があるのだろうか。

「基本的に、どんな方でも96以上あれば正常だと考えてください。93を下回ると酸素供給が必要な危険な状態です。測り方としては、2、3度繰り返し測定し、1度でも96以上の結果が出れば正常です。言い換えれば、93が出たからと言って慌てる必要は無く、安静にして何度か測ってみてください。3時間おきくらいに何度か測り、常に96を下回るということであれば、体調が悪化している可能性が高いです。ただし、肺に基礎疾患がある方は、新型コロナ感染に関係なくもともとの酸素飽和度が低い場合もあります。新型コロナに感染する前の元気な時から、パルスオキシメーターを使って自分の酸素飽和度を測っておき、安静にしてからどれくらい経つと数値が安定するのかを知っておくと、もしもの時に体調の変化に気づきやすくなります」(同)

 酸素飽和度が下がった時には、息苦しさなどの自覚症状があるのだろうか。

「新型コロナウイルスは、“幸せな低酸素症”と言われることもあるように、酸素飽和度が下がっても息苦しさなどの自覚症状が無い場合が多いことが特徴です。私が診た患者さんでも、酸素飽和度の数値は下がっているのに平気そうにしている人もいました。その後、急激に体調が悪化しましたが、パルスオキシメーターのおかげで自覚症状が出る前に酸素供給の対処をすることが出来ました。自宅療養中は特に、自覚症状が出た時には既に酸素飽和度が急激に下がってしまっているということも多いので、パルスオキシメーターを使って体調の悪化の兆候を知ることが重要になります」(同)

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