「最高の睡眠」で免疫獲得するためのエクササイズとは 夜間のトイレからも解放

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 猛暑続きに健康バランスを崩している人も多いのではないか。特に寝られない夜を過ごすと、熱中症の危険が増すばかりか、免疫力も低下するから要注意だ。しかし、快眠の獲得は必ずしも難しくない。自宅でできて眠りの質を高められるエクササイズを紹介する。

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 気温も湿度も高い東京の炎天下でオリンピックを行うのは大変だ。アスリートへの負担が大きすぎる――。たしかに、開催前からそんなふうに言われてはいましたが、それにしても、今年の夏の暑さは、炎天下で競技に参加するアスリートならずとも、厳しすぎると感じています。

 毎日、寝られない夜を過ごしている人も、ことのほか多いのではないでしょうか。寝つきが悪くて、夜中に何度も目を覚ましてしまう人や、ぐっすり眠れずに、朝すっきり起きられない人は、私の周囲にも大勢いらっしゃいます。

 しかし、こうして睡眠不足になると、日中眠くてつらい、というだけでは済みません。体温を平常に保つ能力が低下するため、熱中症をおこしやすくなります。そればかりか、自律神経が乱れて、免疫力が低下してしまいます。

 そうなると夏バテに直結しますし、さらには、ウイルスにも感染しやすくなってしまいます。寝不足や質の低い睡眠は、みなさんの多くが想像する以上に、健康をおびやかします。

 そこで、どんなに猛暑が続いても熱中症にならないために、また、ウイルスに感染しないためにも、しっかりと眠れる体づくりを提案したいと思います。

 しかし、具体的なエクササイズを行う前に、快眠を得るために一番大切なことはなんであるか、確認しておきましょう。端的に言えば、それは眠るための環境を整えることです。

 深い眠りに誘(いざな)うために、なにをしたらいいか。軽くお酒を飲むといい、アロマキャンドルを灯してリラックスするといい、などとよく言われます。しかし、それよりも、部屋を暗くしたり、静かな音楽を流したりして、自然に眠気を誘うことや、眠くなるまでがまんし、眠くなったところですぐに寝ることのほうが、大切だと言えます。

 とにかく、少しでも質の高い睡眠に導くためには、こうして睡眠環境を整えることが第一歩だと思ってください。たとえ睡眠時間自体は十分に確保できたとしても、肝心の睡眠の質が低ければ、体力や気力のほか、免疫力までもが、どんどん奪われてしまうことになるからです。

 眠るための環境を、どのように整えるべきなのかを理解したところで、いよいよ、しっかり眠れる体づくりに入ります。どんな効果を得るために、体のどの部分に向けて、どんなエクササイズを行ったらよいのか、あらかじめ説明しておきたいと思います。

お腹をほぐし、横向き寝

 快眠を得るためには、まず、副交感神経を活性化させる必要があります。一日の活動を終えた体は、まだ興奮のかたまりのような状態にあるので、体を眠りに導くためには、心身のリラックスにつながる副交感神経を、優位に立たせなくてはいけません。

 そこで行いたいのは、お腹をほぐすための「腸腰筋マッサージ」です。

 実は、副交感神経はお腹が支配しています。このため、お腹が緊張したままだと、心身はいつまでもリラックスできないので、お腹をゆるめる必要があるのです。その際、お腹を緊張させている大本である腸腰筋をほぐすのが、一番効率がいい方法です。

 腸腰筋とは腰椎と大腿骨を結ぶ筋肉群の総称。上半身と下半身をつなぐ唯一の筋肉でもありますが、腸腰筋は簡単なマッサージによって、すぐにゆるめることができます。

 次に、お腹を緊張させないための寝姿勢である「横向き寝」のとり方を身につけます。横向きに寝ることによって、腸腰筋はさらにゆるみ、お腹はますますリラックスして、副交感神経が優位に立った状態を保ちやすくなります。

 それに、横向きに寝ると、お尻が寝具に当たりにくくなるので、足先への血流が滞らなくなり、足の冷えやしびれが起きにくくなるという利点もあります。

 寝返りが打ちやすいことも、横向き寝の利点のひとつです。一方、上を向いたまま寝て、なかなか寝返りを打てないと、骨盤が後方に傾きがちになります。哺乳類に特徴的な、内臓を下から支えている大きな骨盤は、上を向いて寝ると、どうしても押されて、ちょうど、寝たまま猫背になっているような感じになりやすいのです。

 実は、人間以外に、上を向いて寝る哺乳類は、ほとんどいません。そのことを記憶しておくといいと思います。

 とにかく、横向きに寝ることで、脳が眠った状態の深いノンレム睡眠に、一気に持っていきましょう。ベストな眠りが得られるかどうかは、最初のノンレム睡眠で決まるからです。

 上を向いて寝ることのデメリットは、ほかにもあって、口呼吸になってしまいやすいのです。上を向いたままでいると鼻腔が狭くなり、鼻で呼吸するのがつらくなった結果、口呼吸につながるのです。

 もちろん、理想は鼻呼吸です。口呼吸の場合、ほこりや細菌が直接、肺に吸収されてしまいますが、鼻呼吸だと、それらは肺に入る前に鼻腔でキャッチされます。そのうえ、肺に吸い込まれる空気も湿った鼻のなかで加湿されて、受け入れやすくなります。

 また口呼吸には、気道が圧迫されるために無呼吸になりやすい、というデメリットまであります。寝ている間、鼻でしっかりと呼吸できるようにするためにも、横向きで寝ることが大切なのです。

 快眠を得るためには、夜間の頻尿対策も、避けては通れません。トイレに行きたくて頻繁に目が覚めていては、質の高い睡眠は望めません。

 頻尿の原因は、だれでも中年期以降、膀胱の容量が小さくなることにあります。すると尿意を感じやすくなって、就寝後であっても、トイレに行きたくて頻繁に目が覚めてしまう人が、どうしても多くなります。

 そこで、骨盤の底にある筋肉で、膀胱やほかの臓器を支えている「骨盤底筋群のエクササイズ」が必要になります。骨盤底筋群を鍛えれば、膀胱のスペースが広がって、夜間にトイレに行く回数を少なく抑えられるようになります。

 そして最後に、体を一気にリラックスさせる「背伸びストレッチ」で仕上げます。一気に脱力して、よい意味で気が遠くなるのを体験できます。

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