がん化抑制効果が高いのはどの野菜? 意外な野菜がランクイン、毎日の「野菜スープ」が効果的

ドクター新潮 健康 食事

  • ブックマーク

コロナ感染予防に有効

 がんになる頻度は年齢のN乗に比例するといわれる。Nの値はがんによって違うが、いずれにしろ、免疫が落ち始める40代以降なら、いつがんになってもおかしくないのだから、できれば、グラフの右上にある、ちさ、黒豆、小豆、緑豆、大根(葉)、カリフラワー、ごぼう、なども野菜スープに加えたい。とくに豆類は、同時にタンパク質も摂れてバランスがいい野菜だから、嫌いでなければぜひ使いたい。

 ちなみに独特な香りがするよもぎだが、本土より沖縄産のよもぎ(フーチバー)のほうが、強い紫外線に曝されるだけあって、抗酸化活性は高い。よもぎをよく食べる沖縄のオバァたちが長生きするのは当然かもしれない。そういえば、オバァたちがよく食べる「ボロボロジューシー(おじや)」は、野菜スープのようなものだ。

 ところで、7月に入って新型コロナの感染者が急増しているが、前田教授が生前語っていたところによると、野菜スープに含まれる成分は感染予防にも有効で、感染してもウイルスの侵入で発生した活性酸素を抑えてくれるので炎症が起こりにくくなるという。

 さて、「週刊新潮」6月3日号では野菜スープの作り方をあまりにも簡単に紹介したせいか、いろいろと質問をいただいた。少し説明を追加したい。

 たとえば、野菜スープは「1日に最低1回」は食べると書いたら、では何回食べればいいのか尋ねられたのだが、2回でも3回でもいい。お好み次第である。また、前田教授は、水1リットルに10種類ぐらいの野菜400グラムほど入れて煮るそうだが、これは前田流であって、5種類でも8種類でも自分の好みで加えればいい。水も800ccでも1200ccでもかまわない。自分が好きな旬の野菜を煮て、そのスープを飲む(食べる)こと以外は勝手次第なのだ。

 かぼちゃを使う場合、スーパーなら2分の1か4分の1にカットして売っているが、有機野菜なら通常一玉丸ごと買うことが多いだろう。中のタネは、おそらく捨てると思うが、先にも述べたように、タネは抗酸化物質の宝庫だから、これを捨てるなんてもったいない。出汁をとる袋に入れて一緒に煮ればいい。

 余談だが、知らずに捨てられているものは意外にたくさんあって、たとえば玉ねぎの皮もポリフェノール(ケルセチン)の宝庫なのだから、出汁袋に入れて一緒に煮ればいい。また、緑豆もやしを茹でてサラダなどに使うことはよくあるが、煮汁を捨てていないだろうか? もやしは新芽だから活性酸素を抑える成分がたくさん含まれている。この煮汁を捨てるなんてお宝を捨てるようなものだ。

農薬には要注意

 味付けについてはブイヨンを使ってもいいと書いたが、できれば最初は味付けせず、本来の野菜の風味を味わっていただきたい。有機栽培で育てると、野菜に含まれるミネラル分が高くなる。うま味はグルタミン酸やイノシン酸などにミネラルが結合したものだから、通常の野菜に比べて美味しいと感じるはずである。まずはこれを堪能し、そのうえで、自分の舌に合わないと思ったら好みの味付けをするのもいい。

 少し慣れてくれば、自分の体質に合わせた野菜スープを作るのもいい。

 たとえば、グルタチオンという強力な活性酸素消去物質がある。心筋梗塞や脳梗塞、肝機能低下などのリスクを抑えてくれると言われていて、こうしたことが気になるなら、グルタチオンをたくさん含む野菜を使うのもいいだろう。

 基本的にレバーに多いが、野菜ではパセリ、ブロッコリー(特にスプラウトと呼ばれる新芽)、カリフラワー、アスパラガスの穂先などに多い。穂先に多いのは、野菜の新芽を紫外線から守るためである。

 グルタチオンは熱に弱いから穂先は茹でるなと書いている書物は多いが、前田教授によれば、茹でても20~60%は残るそうだから、あまり気にしないほうがいいだろう。

 また、前立腺の腫瘍マーカーに使われるPSAが少し高めだという方なら、リコペンを多く含むトマトをメインにした野菜スープもいい。リコペンは油に溶けやすいから、オリーブオイルで炒めてから他の野菜と煮るか、トマトジュースにオリーブオイルを入れて加熱してもいい。ただ、トマトは比較的農薬の散布回数が多いので、有機トマトジュースが手に入るならその方が安心だろう。

 農薬は危険だから、野菜スープに使う野菜は、「できれば有機野菜を」と書いたところ、こう言われた。

「日本人の平均寿命は世界でもトップレベル。農薬は危険ならこんなに寿命が延びるはずがない」

 これに納得する方が意外に多いのに驚いた。

 まず、平均寿命と農薬は関係がない。中国は世界一の農薬大国でも、平均寿命は延びている。平均寿命に大きな影響を与えたのは感染症だ。戦前も70代80代まで生きる人はいたが、戦後になっても日本の寿命が50歳代を推移したのは、乳幼児の死亡率が高く、結核など感染症が蔓延していて、平均すると寿命が短くなったからだ。その後、公衆衛生が改善され、医療環境が充実して平均寿命が延びていった。

 では、農薬を大量に使うようになって何が起こったかというと、がん、パーキンソン病、発達障害、うつ病、自己免疫疾患、アレルギー疾患、アルツハイマー等々、半世紀前は想像もしなかった病が増えたことだ。この多くに農薬が関連していることは、拙著『本当は危ない国産食品』(新潮新書)でも記したが、問題は、発症しても因果関係の特定はむずかしいことである。

 農薬の問題は「水俣病」に通じる。病気と化学物質の因果関係が科学的に証明されないからといって大勢の被害者を長い間苦しませてきたし、その苦しみは今も続いているが、農薬が同じ道を歩まないと、誰が断言できるだろうか。

奥野修司(おくのしゅうじ)
ノンフィクション作家。1948年生まれ。『ナツコ 沖縄密貿易の女王』で講談社ノンフィクション賞と大宅ノンフィクション賞を受賞。『ねじれた絆』『皇太子誕生』『心にナイフをしのばせて』『魂でもいいから、そばにいて 3・11後の霊体験を聞く』など著作多数。

週刊新潮 2021年8月12・19日号掲載

特集「大反響に応える がん予防の若返り『野菜スープ』最強の野草とは?」より

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。