「孤独のグルメ」「お耳に合いましたら。」「ひねくれ女のボッチ飯」「シェフは名探偵」…テレ東メシ系ドラマをどう見るか?
ヒロインのボッチ飯
漬物会社の面々もなかなかの曲者ぞろい(芸達者)だが、しっかりリアリティもある。TBSや日テレが得意とするゴールデンタイムの「女のお仕事ドラマ」に肉迫するクオリティだ。並んでも遜色なし。いや、今なら勝てる(かも)。
チェンメシに興味がなくても、世知辛い現代を生きるヒロインの成長物語が好きな人、ラジオやポッドキャストなどの音系メディアが好きな人、きーちゃんこと氷川きよしが好きな人(美園がファンという設定)、漬物というか食品会社に勤務する人にはおすすめしたい。
もうひとつ、ヒロインものを。飯豊まりえ主演「ひねくれ女のボッチ飯」(木曜深夜放送※19日最終話)。タイトルどおり、飯豊が演じる川本つぐみはひねくれている。コンビニでバイトする23歳、夢も希望も目標もなし。声に出さないものの、心では常に毒づき、愚痴をたれている。
これが重要。若い女性が無理に愛想笑いせず、容易に世間に迎合しないほうが健全だ。Adoの「うっせぇわ」がヒットした背景を考えれば、今の空気感にも合っている。ひねくれているぐらいのほうが生きやすい。ひねくれ上等、ボッチ飯上等。卑下することなかれ、と思うと、メシくらいで容易に変わってほしくない。飯豊の無愛想っぷりが見どころのひとつでもある。
そんな彼女がInstagramで見つけたのがホワイトホースなる男性のアカウント。自分の今の気分と妙にシンクロする言葉の数々。妙に長くて、ポエム調なのだが、ホワイトホースが毎回アップする飲食店に興味を抱く。彼の訪れた店へ行き、同じ料理を注文して、後追いすることに。訪れるのは定食屋や居酒屋が多いが、イタリアンやタイ料理、焼肉や鮨、そして最後はフレンチのコース料理へ。細身の飯豊がそこそこがっつり食う。心の中でいちいち文句つけながらも食う。
自炊系ドラマも
面白いのは、ホワイトホースの正体。うだつの上がらない営業マン・白石一馬を演じるのは柄本時生。うだつの上がらなさで言えば俳優界随一ね。仕事ができない男の、怒られっぱなしでへこみ続きな日常をポエム仕立てで盛って投稿しているというわけだ。ただし、つぐみが脳内で妄想するホワイトホースの声はかなりイケボ(声は、イケボでイケメンの声優・下野紘)。白馬ということで「王子」と呼んでいるのだが、現実はしょぼくれた柄本というトリッキーな設定だ。
このふたりがついに相互フォロー、実際に会えるかというのが最終話。期待はしない。ラブコメじゃないし。飯豊はひねくれたまま、柄本はしょぼくれたまま、そのままありのままでいい。
唯一、飲食店ではなく自炊系のドラマが、BSテレ東の「ホメられたい僕の妄想ごはん」(土曜深夜放送)。パッとしない会社員だが、週末はバンドのベーシストになる(つってもモテキャラではない)主人公・和田理生。演じるのは高杉真宙。まあ、こっちもうだつが上がらない若い男性なのだが、どうにかこうにかホメられたい願望が強くなりすぎて、毎回いろいろな女性に料理を作ってあげてホメちぎられる妄想をしながら料理する、という話だ。
ひとり暮らしのわりに、キッチン素敵やん。高杉が非モテキャラってどうよ。ツッコミたい点は多々あるが、このコロナ禍で誰かにホメられたいと思う気持ちは痛いほどよくわかる。私もベランダでトマトやイチゴを栽培したり、梅干しを作ったりで、会う人会う人に押し付けている。ホメられたいのよ、自分が手塩にかけて作ったモノを。料理を始めたものの、食べるのは自分だけ。誰かに食べさせたい、そしてホメられたいと思っている人には、このドラマを勧める。
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