「片山友希」「長井短」「矢作穂香」…もっと主役級で見たい!女優7選

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 東京五輪の開会式、なんか「居丈高なおじさんたちによる俺のコネ自慢祭り」だったね。森山未來の舞に込められた怨念と呪詛が世界に届いたと信じているが。

 ということで、前回に引き続き、「推し」を集めるシリーズ。男だけでは不平等なので女優編。主役級で観たい20代に絞ってみた。

 まずは、真木よう子の滑舌が喫緊の課題だった「ボイスII 110緊急指令室」(日テレ)で、撃たれて死亡した犯人グループの片山友希。唐沢寿明の熱血を継承する刑事(増田貴久)にトラウマを与える役どころ。悪意ある役も多いが、ちょい舌足らずで淡々と話す姿はかなり抒情的。のん、永野芽郁と片山で3姉妹とかやってほしいな。で、真木よう子の滑舌がかなりよくなっている! サ行に若干の不安が残るものの、涙と恐怖の珠玉の演技でカバーしてうやむやにする技に拍手。

 クセの強さなら、長井短。「武士スタント逢坂くん!」(日テレ)に漫画家のアシスタント役として出演中だが、飄逸という言葉がぴったり。「幼気(いたいけ)で純朴で従順で頑張り屋」の若い女性がもてはやされる世で、彼女は真逆をいく。よい意味で気ままな役が多いし、日本のドラマで増やすべきキャラを担う女優のひとり。世間体や常識よりも自分の感性や美学に忠実な女は、長井の専売特許になりつつある。

「女の戦争~バチェラー殺人事件~」という、テレ東深夜枠にしては1mmも興味をひかないドラマに出演していたのが、富士額の美しい成海璃子。キャリア的にも実力でも、もっと活躍の場があってもいいのに。バチェラー(古川雄大)を巡る熾烈な争いでとっとと敗退。好みの成海も真飛聖も敗退しちゃったら、よるべなし。

 森田望智(みさと)は振り幅最大が魅力。Netflix「全裸監督」と朝ドラ「おかえりモネ」という、相反するマインドの作品で今夏暗躍。知と痴の共存が可能な女優はもっと重宝されてよいと思う。「恋する母たち」(TBS)で演じた愛人・のり子役が瞼の裏に張り付いて剥がれない。

 高杉真宙主演「ホメられたい僕の妄想ごはん」(BSテレ東)からは、ふたり。高杉の幼馴染役で海外在住、電話するだけの小野花梨。そして第4話でゲスト出演したのが韓国人留学生役の矢作穂香。このふたり、業や欲の深い役もハマるので、カワイイだけの役ではもったいないなと。小野も矢作も子役時代から見守っている。長谷川博己主演の名作「鈴木先生」(テレ東)で、ふたりとも印象的な生徒役だった。小野は「フジコ」(Hulu)での怪演で虜になったし、矢作には「おしゃ家ソムリエおしゃ子!」(テレ東)で胸を射抜かれたし。叔母の気持ちで活躍を祈る。今期のメシ系ドラマの中では唯一自炊モノで料理の映像が美しい。高杉も美しい。

 ラスト。胸糞悪い描写が今期ダントツの「ただ離婚してないだけ」(テレ東)で、幼さと狂気をがっつり見せてくれたのが萩原みのりだ。復讐する役が多いのは怒りや憎悪の表現が秀逸だから。松本まりかと母娘役をやったら凄絶だろうなぁと妄想。

 誰得の推しシリーズ終了。次から通常運転に戻ります。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビドラマはほぼすべて視聴している。

週刊新潮 2021年8月12・19日号掲載

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