内閣支持率30%割れで安倍チルドレンの悲鳴 それでも自民党総裁選「党員投票なし」を画策する人々

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自民党の「異常」

 総選挙で自民党は苦戦するという情勢調査が、すでに出ているという。

「昨年末に自民党は大規模な調査を行いました。すると、マイナス50議席の可能性があるという結果になったそうです。現有の(衆議院)276議席から50議席を引くと、226議席。過半数は233議席ですが、公明党が29議席を持っています。私が話した自民党の国会議員は、『マイナス30なら菅内閣を支持する』と言っていました。近く大規模な情勢調査が行われるでしょう。マイナス50を上回るような壊滅的な数字が出ると、二階さんがどこまで菅さんを守るのかが焦点になります」(同・伊藤氏)

 これほど内閣支持率が下がっても、自民党内からは「菅おろし」の声は聞こえない。伊藤氏は「異常を通り越して不気味です」と言う。

「自民党の強さは、トップがダメなら、みんなでトップを引きずりおろすことにありました。菅さんで総選挙を戦えないのは間違いなく、本来なら菅おろしが起きてもおかしくありません。ところが、国会議員は何も言わない。私は党の職員OBとして、ずっと自民党を見てきましたが、こんなことは初めてです」

実績重視の“罠”

 なぜ、菅首相の支持率が劇的に低下したのか。首相就任時は「叩き上げ」や「パンケーキ」など好意的な報道が多く、有権者も積極的に支持していたはずだ。

「首相には2つのタイプがあります。1つは人たらしタイプで、田中角栄さん(1918~1993)が代表例です。もう1つはプロ政治家タイプで、佐藤栄作さん(1901~1975)や大平正芳さん(1910~1980)が当てはまります。後者の政治家は、有権者に対する発信力は決して強くありません。その代わり、『自分は口べただが、実績を見てくれ』というわけです。菅さんも同じ志向だと思います」(同・伊藤氏)

 菅首相は時代の変化にキャッチアップできていない──伊藤氏は、こう指摘する。

「佐藤さんや太平さんの時代は、それほどマスコミ対策や有権者対策を行う必要がありませんでした。自分が正しいと信じる政策を実行すれば、それが実績に直結したのです。ところが今は、SNSの発達もあって、“異論”が顕在化するようになりました。その象徴が東京五輪です。菅首相は心の底から本気で、『東京五輪を開催したのは自分の実績だ』と考えているはずです。ところが有権者の中には、『そもそも東京五輪の開催に反対していた』という層が一定数存在します。分断と言ってもいいですが、菅首相の考える実績が、逆に一部の有権者の反感を招いているのです」

菅おろしの行方

 時事通信は8月7日、「菅首相『無投票再選』に暗雲 自民総裁選、複数が出馬模索」、読売新聞も同11日、「自民総裁選『複数候補で論戦を』…支持率低迷で党内に危機感」との記事を配信した。

 果たして伊藤氏の言う「不気味な状況」がこのまま続くのか、要注目である。

デイリー新潮取材班

2021年8月16日掲載

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